未知の生命体「ジャム」と人類の戦いを描いた傑作「戦闘妖精・雪風」から15年のブランクを経てついに刊行された続編。<BR> 前作で新しい機体を手に入れ、戦闘に不向きな「肉体というハンデ」を背負った人間を拒否するがごとく、パイロット零を放出した雪風。<P> 究極の機械は、人類によってコントロールさせる必要があるのか、まるでこころをもったかのうようにふるまう機械群と生命との境界線はどこにあるのか、戦闘機械たちはむしろジャムにより近しいのではないか。<BR> 前作から続くSFの古典的テーマを斬新な切り口でえぐりとる剛腕ぶりはさすが、と唸らされる。<P> 前作ではあかされなかった秘密の扉が少しずつ開いていく快感と、それを知ったときの驚き。<BR> 孤独で雪風以外の誰も信用しなかったロンマンアーミー零が、次第に機械とこころ通わせ、周囲の人間たちともうち解けていく姿には著者の15年を経てたどり着いた新たな境地を見いだす思いだ。<P> とにかく前作に感動した方には、絶対にハズレのない続編として強くお薦めしたい。
SFのファンならこれを読まなくては、といえる内容です。<BR>戦闘妖精雪風の続編なので、前作を読んでいないと何が起こったのかわからないかもしれません。それから、専門用語が多いので、戦闘機に関する知識がないと、少しわかりにくいです。
空中の戦いが中心だった前作に対して、本作では空中のみならず、地上での人間,および雪風に代表される戦闘コンピュータ群に焦点が移ることによって、より物語に深みが増す。<P>深井零は、雪風から強制ベイルアウトされたことによって、それまでの雪風への一方的な信頼から、新たな境地に達し、前作で言及されたジャム人間に対する対策のため、ブッカー少佐はさまざまな画策をする。その過程を追う事で、われわれ読者は人間-機械(コンピュータ)の関係について新しい見解を得ることができる。<P>中盤のジャムについてのブッカー少佐の長々とした会話はやや難だが、人物の軽妙な台詞と、良質なミステリ風味付け(次にジャムは、雪風は、どう出てくるか?)を楽しめるすばらしい作品。