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| 火星の人類学者―脳神経科医と7人の奇妙な患者
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オリヴァー サックス
Oliver Sacks
吉田 利子
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何らかの事故に遭い、脳の一部の損傷により、見える世界がガラリと変わったら、われわれはどうなるだろう?<BR>ある日突然世界が灰色になってしまった画家は、われわれとはまったく違う捕らえ方で世界を見ることによって、ついにはその世界で生きることを選択する。<P>人間は、失ったもの以上のものを得ようとするポテンシャルを持っている。オリバー・サックスのあたたかいまなざしで描かれたこの本は、人間がもつ驚くべき奇跡をわれわれに示してくれる。<P>「健常」とは何か。生きる上での人間の人生の価値とは何か。考えさせられます。 紹介される患者のライフスタイルが非常に興味深いと同時にそうした障害が別の能力・方法によって不思議と調和されてゆく。これは決して特殊な症状を羅列するのではなく、そこから人間の見えない力を垣間見させてくれる。 必要以上に冷徹にならず、かといってロマンチックになり過ぎず。<BR>難しいさじ加減をしっかりとってあるのは、さすがの一言。<BR>肝心の題材も「色のない世界を生きる画家」に始まる六つの物語と、<BR>興味は尽きない。<BR>紛う事なきノンフィクションの秀作。
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