私にとって本書は以前から「気になる本」の1冊で、何度となく書店で手にしていたのだが、分野が「デザイン」というのが気になって購入に踏み切れずにいた。<P>しかし、思い切って購入して読んでみると、IDEOで実践されているブレインストーミングをうまく運営するためのノウハウや、革新的なアイデアを生み出すためのチーム作りの工夫など、デザイン以外の分野にも適用できる「イノベーションを実践するための組織作り」のためのアイデアが満載されており、ソフトウェア開発に携わっている私も楽しく読むことができた。<BR>「企画会議をやってるんだけど趣旨説明の直後の沈黙が怖い」という方、是非。
この本の最初に米国のTVドキュメントで放送されたIDEOというデザイン会社のメンバーが、チームとなってスーパーマーケットの買いカートのデザインをするところが描かれています。私が米国のビジネススクールに留学中にこのTVドキュメントをビデオで見てディスカッションしました。とても創造力を刺激されたのを記憶しています。また、何年か前にロンドンのIDEOのオフィスを訪問する機会がありました。日本の一般的な会社と違い、本当にクリエイティブな空間で本書でもその様子を垣間見ることができます。<BR>ただ、どうすればイノベーティブになれるか、というノウハウ本ではないし、IDEOの真の秘密が明かされているわけではないような気もします。
冒頭、テレビ局がIDEO社に持ち込んだ企画で実現した「ショッピングカートを5日間で完全にデザインしなおす」プロジェクトの過程をテレビカメラが追った事例がスリリングです。ブレインストーミングやプロトタイピングの場面を写した何点かの写真が臨場感を高めてくれます。この描写に、この会社の持つ様々な能力や経験が凝縮されているように思います。5日間のドラマですね。テレビ放映されたものを見てみたい! <P> 私はデザイン関係の専門家でもなんでもないので、この本で紹介されているIDEO社(アイディオ)という会社のことは何もしりませんでしたが、取り上げられている製品事例のラインアップを見ていくと、誰でも知っているような大ヒット商品ばかりで、どうやらその筋では知らない人はいない存在のようです。ただ、この本の中心はデザインそのものではなく、仕事の仕方としていろいろなところで使える素晴らしいアイデアの紹介です。巻頭の紹介文は、トム・ピーターズです。<P> この素敵な企業のエッセンスの塊を、ゼネラルマネジャーをしている著者(創業者の弟:元々はデザイン系というよりビジネス系の経験を積んできたらしいですね)が、どうにか章立てを決めてある程度論理的に見えるように分解して説明しようと奮闘している本という感があります。ただ、きっとそういう分解をするのは難しいのではないでしょうか。順序だてて記述する形式では表現しづらい面が多分にあるようにおもいます。そのかわり、豊富に掲載されている写真群はインパクトのあるものがたくさんありました。<P> 紹介されている仕事の仕方や事例で、はっとするような驚きを与えてくれるものはありませんでしたが、表題から受けたイメージで少し期待を膨らませすぎたかもしれません。私にとって、事例集の一つとしては価値がありました。「技法」を学ぶ本だとは思わないほうがいいと思います。