異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 みんなこんな本を読んできた 異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念
 
 
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異端の数ゼロ―数学・物理学が恐れるもっとも危険な概念 ( チャールズ サイフェ Charles Seife 林 大 )

 本書の第0章(!)に著者が書くとおり、「ゼロが古代に生まれ、東洋で成長し、ヨーロッパで受け入れられるために苦闘して、西洋で台頭し、現代物理学にとって常なる脅威となるまで」の、「ゼロの物語」です。<BR> この手の本ではいつもそうなんですが、文系人間にとっては相対性理論や量子論、ひも理論なんかに絡む部分は、やっぱり何となくしか分からない。それは仕方ないとして、ゼロ概念がアリストテレスの思想やキリスト教の縛りを解き放って広まっていく部分は、思想史の問題として十分に楽しめた。実際、本書の半分以上がこの叙述に割かれているんで、「ゼロの思想史」みたいなタイトルでも違和感ない。<BR> あと、余分なことですが、ゼロという言葉の起源がアラブ人の使ったsifrだという説明がp85にあって、そういえば著者の名前がSeifeなんですよ。似てるでしょ。トンデモな関係付けでしょうけど、著者の名前と研究テーマって、時々偶然とは思えない一致をするんですよね。

ゼロの歴史から古代ギリシャ宗教との関連性など、とても興味がある内容が書かれていました。ある数をゼロで割るという例外的な演算の意味や証明なども書かれており、初めて知ったということが多々ありました。

「0」という数字は、1から9までの他の数字とはなりたちも性格も大きく違うもの。その異端の数字がこの本の“主人公”である。こうしたテーマには惹かれるものがある。<BR> 前半は「0」という概念の発見から始まり、なぜ、世界の多くで「0」が長い間受け入れられてこなかったかが書かれてある。そこには「神の存在」という問題がつねにつきまとっていたのだ。<P> そして、「0」がだんだんと中世以降のヨーロッパで認められていく過程や、「0」が生み出したともいえる新発見などに話が移っていく。そして最後は数学から離れて、20世紀以降の物理学や天文学で扱われてきた「0」の話になる。<P>「0」というテーマは、けっこう壮大なものかなと思っていたが、本編のボリュームは標準的な240ページほど。たとえば『エレガントな宇宙』や『フェルマーの最終定理』などの分厚い海外ノンフィクションに比べると、人物の紹介やエピソードなどはエッセンスだけに絞って、いくぶん抑えてかかれてあるような気がした。<P>「0」と表裏一体の関係の「無限大」についての話も、「0」についてと同じぐらいの分量で出てくる。それほどまで「0」と「無限大」は切っても切れないものということか。<P> 専門的でものすごく難しいことが書かれているわけではないが、少しは数学や物理の知識があったほうが、つまずかずに読み進めることができるだろう。学校で数学の勉強をまあしっかりやっていて、相対性理論や量子力学の初歩をかじったことのある方ならば付いていける。また、「ある数を0で割ると、その答えは無限大になる」といったことをあらかじめ知っておいた上で読めば、よりすんなりいくと思う(そうした話があまり説明なしで出てくるから)。<P> 素晴らしいことに昔の人々は、存在の無いものを「0」として存在させて、世の中の仕組みをよりわかりやすいものにした。こうした話を読むと、「0」の発見とは言わないまでも、単純でありながらまだ発見されていない「便利なもの」が、世の中には眠っているのかもしれないと思えてくる。

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