北米大陸で13年に一度、あるいは17年に一度の割合で同一地域に大量発生するセミがいます。13も17も素数(1と自分自身でしか割り切れない数字で1より大きいもの)であることから、このセミのことを著者は「素数ゼミ」と呼びます。<BR> セミの幼虫が地中で長年月を過ごしてから地上に出てくることは日本の小学生ならだれでも聞いたことがあるでしょう。アブラゼミやミンミンゼミは通常7年程度で成虫になります。しかし本書の主人公である「素数ゼミ」は13年/17年もの長い時間をかけて成虫になるというわけで、地中生活の長さはまさに桁違いです。<P> ではそれほどの長期間、地中で過ごすのはなぜなのか?<BR> また同じ場所で大発生するのはなぜなのか?<BR> そしてなぜ13年とか17年という素数の周期で発生するのか?<BR> 本書はこの3つの謎について、中学生にも分かるような易しい日本語で説明してくれる、コミカルなイラストつきの小冊子です。<P> 謎に対する解答は明解至極。その御明察ぶりに幾度も膝を打ちながら読みました。上質のミステリー小説を手にした時のような爽快な読後感を味わえます。<P> 判じ物の書評で解答まで記すわけにはいきませんから、詳しくは本書にあたってもらうとして、本書が浮かび上がらせてくれるのは、大自然が計り知れないほどの歳月をかけて巧みに積み上げてきた種の保存の歴史です。素数ゼミ(正式には「周期ゼミ」)がこのような不思議な性質を帯びるようになったのは180万年前の氷河時代ということですから、なんとも気の遠くなる話です。<P> なお、本書を面白く読めたという高校生以上の読者には次の類書もきっと楽しめることでしょう。<BR> 「はじめての進化論」(河田雅圭/講談社現代新書)<BR> 「利己的な遺伝子」(リチャード・ドーキンス/紀伊國屋書店)
速読なんか絶対しない私が,昼休みにラーメンを食べながら読み終えてしまったのにはビックリしました。他のレビュアの方も言っておられましたが,中学生くらい向きかな?とも思います。でも話の内容は極めて高度で説得力に富んでいて面白かったですね。<P>ただ,筆者は素数ゼミの起源について,説明を簡単にする必要からか,まず一定年数の羽化周期をある地域のセミ一族が獲得したのだろう,その後14年,12年などの「非素数」周期の一族は交雑に巻き込まれて数を減らし,結局「素数」ゼミが生き残ったのだろう,と述べています。しかし進化はいくつもの要素が同時進行で進むのでしょうから,本当はどのようだったんだろうか?もっと知りたくなりますね。この簡単な本の裏側に膨大な研究があるであろうことは,たとえば「○○には14年ゼミもいたらしい」などということがさらっと書かれていることからも推察されます。<P>いっそ,この本の「素人の数多くの大人向け」(略して素数大人)の本も是非書いていただきたい(笑)。売れないかな?
興味深い内容が読みやすく書かれています。ただ、大人向けの科学書ではなく、中学生くらいを想定して書かれた科学入門書のような内容です。面白かったですが、1時間もかからずに読み終わってしまいました。新書や文庫になったら全ての方に勧めますが、あまり安くないので積極的な購入は勧められません。読者が中学生限定であれば星5つでも文句なしの内容なのですが。