他人宛の手紙っておもしろいものなのか。最初はどうなのかなと思って、読み出しました。ところが、犬ぞりをしながら手紙を書いている部分、かなりおもしろくって、どんどんハマってしまいました。本では決して書かないような、植村直己さんの本音の部分もたくさんあって、ああ同じ人間だなーみたいな感じがして。公子夫人にしか吐露できない真情ってやつです。植村さん独自の口調が、これまた味があって良いです。巻末にある公子夫人の言葉どおり、確かに、こういう手紙を人に見せられたら、恥ずかしいだろうなって思いました。
表には決して出さない。身内にしか見せない顔は誰しもあると思う。しかもそれが妻ならば、なおさらだ。本人がこの本を観たら赤面してひっくり返るだろう・・・。私も後世に何か残す時はよくよく注意しなければと余計な心配をしてしまった。だが、ファンにとってはこれほど読みたいものはないだろう。手紙がそのまま載っていて、誤字脱字の多いのも場所が場所だけにしょうがないと思いながらも、植村さんを思い浮かべるとニコッと頷けてしまう。こんなにも貴重なものを!!公子さんに感謝だ。
<BR> この本は、私が初めてふれた植村直己作品です。<P> 世界的な冒険家として名を馳せている植村さんが、各地から奥様に送られたお手紙をまとめた本です。<BR> 過酷な冒険を成すその裏側で、奥様だけに見せる人間らしい弱さ、そして強さに裏づけされた優しさが、随所に滲んでいます。<P> その純粋で素直なお手紙の内容は、読んでいて、時に微笑みをさそいます。 そして最後には、女性としてこのように愛された奥様は、やはりお幸せであったのではないかと思いました。<BR> 数々の植村作品を読まれている方にも、ほかの著書ではみられない氏の一面にふれられる素敵な一冊だと思います。