帯に「まるで21世紀の植草甚一だ」と書かれているが、本書は植草<BR>ほどにぺダンティズムを見せない。エッセイには大きく、書き手の<BR>知識を縦横に繰り広げるものと、書き手の生活の身辺を見回すもの<BR>との二種類に分けられるが、本書は後者に近い。しかし、著者のカ<BR>バーする範囲は膨大である。齢を積みながらそのようなバックを<BR>形成しているだけに、この著者の老いはなまなかのものではない。<BR>そんな著者の文章である。一つのうまい老い方を学べた。
本の置き場所に悩んだことがない人にはお勧めできない。<BR>これは本読みが著者とそして自身の因業さを身につまされながら、それでも改めて本が好きなのを再確認させられる一冊だからだ。<BR>風情のある文章を堪能し、読後、改めて本だらけの自室を眺めてため息をつくしかない。<P>あと、この本で初めて草森紳一を知った人は、雑誌『en-taxi』Vol.9の特集「草森紳一 雑文宇宙の発見者」でこの人物の輪郭を知り、そこから個別の著作に向かうのを勧めたい。<BR>特に政治と宣伝について論じた何冊かの本は、活発に広告代理店が政治に絡む現在、一読に値するはず。