藤沢周平ファンとしては、たそがれ清兵衛に続き、鬼の爪が映画化されるのは嬉しい限りです。<BR>本シリーズは主人公、またはそれに準じる者が秘剣を持っており、それを人生の節目で使います。しかしながら、その響きとは異なり、秘剣を使うことは必ずしも華々しいものではなありません。やむにやまれず使うこともあるし、最後に一矢報いるために使うなど。<BR>主人公が派手な人間ではなく、地味な人が多く、剣が強いというのもそれほど大したメリットではないような社会で生きています。個人的には必死剣鳥刺し 女人剣さざ波の二つが非常に好きです。
大好きな藤沢さんの、時代小説短編集。<BR>各編に「秘剣」とされる剣技名のタイトルをあてていて、それぞれの主人公にぴったりとはまっています。<BR>共感できるのは、主人公たちが皆、サムライ然としているわけでなく、普通の男に見えるところかもしれない。臆病でだらしなく、浮気者で偏屈。昔伝授された秘剣を忘れ去ってしまった者だっている。だけど、ここぞというときの、彼らの行動やキラリと光る剣裁きに、スカッとしたここちよい風を感じる。<BR>どんなに時が経っても、なにかの事情で落ちぶれていても、かつて秘剣を学び使いこなした彼らが、ひとつの信念をつらぬき、それぞれの敵を倒していくストーリーは時代小説好きでなくとも楽しめます。<BR>
隠し剣シリーズは、藤沢周平さんの代表作ですね。<BR>どの主人公も、華やかな強い剣客というよりも、何処か影を持ち、ごく普通の生活を営みながらも、人知れず、秘伝の隠し剣を継承していて、それを人知れず花咲かせる。<P>強さをあまりひけらかしたりしない、日本人の美意識がここにはあるように思う。本当の強さ、かっこよさというのは、こういう秘めたる力であるように思う。藤沢さんの描く、日本人の美意識には、いつも心動かされます。<BR>映画「隠し剣 鬼の爪」も本当に楽しみ!!