落下傘部隊の飛行機の中で兵隊が「君は希望しなければここに来なくてもよかったのか」の問いにキャパの発したコメントが印象的。<P>愛するものと、いつ死んで消え果てるともしれない不安定な関係が、米軍属として複雑な立場であるキャパ本人の性格でコミカルに表現されており、感動を呼ぶ。<P>カメラを構えるものとしての現場の絵を作るという芸術的な作業の傍ら、戦争報道という仕事の持つ特殊性が、私自身の写真やその意味するところに対する考え方をも変えさせてくれた一冊。
第二次大戦を撮ったハンガリー人カメラマン、ロバート・キャパの1942年からヨーロッパ戦争終焉までの活動手記。僕が生まれて今まで読んだ中で五本の指に入る素晴らしい本。<P> まず何よりも驚くのは、全編を貫かれるユーモア。そして、キャパに限らずとにかくみんなよく飲むし、女が好きでしょうがないという雰囲気が至るところで読み取れる。戦時中の手記なのにそんなことが読み取れるのだ。そんなに戦争を取り上げた本を読んだことはないけど、それにしても日本の戦争モノでこんなことが読み取れた本なんてなかった。戦争の悲惨・非道を伝えることはもちろん大事だが、一面的に過ぎることの恐さは忘れてしまうのだろうか?<P> ほんとにキャパが人間くさくて撮ることに夢中で魅力的な男だというのが凄ま!!く伝わってくる。敵国籍でありながらカメラマンとして帯同していく、酷く困難な道程にしか思えないのに、キャパはその都度その都度現場で出会った人とコミュニケーション(しかも彼は英語を満足に話せる訳ではない!)し味方につけて、どんどん前に進んでいく。今の自分は何かにつけ便利な世の中に住んでいるのに、なんて逃げ腰に生きているのだろうと深く反省し、とにかく対話で前に進めるんだという気持ちを起こさせてくれる。
キャパを知らない人は、まずいないに違いない。あまりにも有名で感動的なショットの数々。戦争の真実と平和を取りつづけた偉大な写真屋。<P>だが、私は恥ずかしながらキャパが文章を書いていたことは知らなかった。こんな年になるまで。読んでみると、蒼蒼たる出演者に驚いた。へミングウエー、スタインベック、ピカソなどなど。写真の背景にはこんな人生があったのか、と。恋とお酒と戦争の日々。ただただ写真をとるためだけに。そんな中でも、特にDデーは圧巻である。<P>ここに出てくる場所はほとんど行ったことがあるけど、そこには静かな世界しかなかった。今度訪れるときには、もっともっと感慨深くキャパに思いを馳せたいと思う。<BR>最後に、この翻訳はすばらしい。彼に対する愛情がひしひしと伝わっ!て、やさしく友情溢れる思い入れに、翻訳以上のものを余すことなく伝えている。<BR>やっぱ、キャパは凄かった!