ノモンハンの夏 みんなこんな本を読んできた ノモンハンの夏
 
 
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ノモンハンの夏 ( 半藤 一利 )

ノモンハンでの個別戦闘の詳細は意図的に割愛されており,かわりに参謀本部,関東軍,ベルリン,モスクワで誰がどう考え,どうトリックを使い,どう嘘をつき,どう意思決定し,そして結果がどうだったのか,という一連の流れがとてもよく分かる.関東軍が暴走して紛争に発展し,巨大な損害を出した,というのが教科書的な説明ですが,この本はその背後に信じられないような稚拙な作戦計画・指導がどうやって生まれて実行されたのかが書かれています.はっきり言ってため息しか出てこない内容ですが,非常に教訓的ではあります.<P>誰が懸案処理に対して権限を持っているのかを明示せず,それを持っている側は明確にそれを使わず,曖昧にこちらの意を汲み取れという風に振舞い,権限を持っていない側は現場主義などと吹聴して勝手な論理で暴走し(あるいは怠けて),現場は文字通り壊滅し,事後処理は実に甘い,というプロセスは今の日本にもたくさん見られることでは.これを防ぐために何を徹底しなければならないかは本書のあちこちに書かれており,マネジメント面での教訓として有益だと思う.<P>とんでもない越権行為をやってのけた参謀達の堂々たる言い訳がこれまたすごい.なるほど,2万人弱の死傷者を出してもなおこういう弁明や「解説」ができてしまうのかと,怒りを通り超えて関心すらしてしまう.

ノモンハンではソ連側もいくつかの失敗を犯しているのだが、同じ失敗は繰り返していない(例えば、火焔ビンに弱かった戦車の改良)。それに対して日本側は、この時の失敗をその後の対米戦においてさえ生かすことが出来なかったのである。行き当たりばったりだった軍事作戦上のことに限らず、意志決定がいい加減で責任の追及が曖昧、かつ有効な人事が行えない日本的組織の見直しにも生かすべきだったのだが、それらの問題は現代にまで尾を引きずる結果となっている。本書はノモンハン戦を描くことにより、その問題点を克明に浮かび上がらせることに成功している。<P>本書を読んでいると怒りややるせない気持ちばかりが湧き上がってくるが、多大な戦果を挙げた火焔ビンによる対戦車戦が、唯一痛快な気分に浸れる箇所であろうか。

本当にこんなに近い歴史の中で、このような事実があったのかと疑いたくなるほど、このノモンハン事件はあまりにも無様である。信賞必罰がない日本陸軍の作戦課が戦争を拡大し、380万人もの日本人、さらには多数のアジア人を犠牲とすることになった。人の命は地球よりも重いという言葉があるが、この本の登場人物は人は将棋の駒より軽いと思ったのであろうか。 この事件をきっかけに、軍縮とはいかず、軍拡となったきっかけはどこにあったのだろうか。 会社員としてこの本を熟読することで、会社の運命はいかにというを考えることができる。 歴史好きではなく、是非とも企業論・マーケティング論などを勉強されている方に読んでいただきたい。 

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