事件が残したものは何なのか。<BR>オウム信者の肉声から、その一端を垣間見ることができる。<P>一般社会では得られなかった彼らの真摯な問いを、教団は事も無げに答えることができたのだ。グルへの帰依というワイルドカードは、信者を煩悩と自己の消去へといざなう。簡易に与えられた「悟り」は、その加速度を増し、彼らの生まれた場所「現代社会」に体当たりを食らわすのだ。彼らのシステムは今なお息づいている。そのシステムを廃液のように生み出しつづける現代社会。それを感じることのできる生きた本だ。<BR>ワイルドカードを使うのは、教団ばかりではない。<BR>ある意味、怖さを覚える本。
あとがきで村上春樹が「サリンの被害者よりも、オウムの信者の方が、いわゆる”いいひと”が多いように感じた」と言うのに少しショックを覚えた。<P>オウム内部の縦割り組織構造で、よその部署が何をしているかさっぽり分らない。と言うのは果たしてオウムに限った事ではない。<P>自分の会社のある部署が、ある犯罪行為に加担していても普通の社員は知るよしもない、ただ自分は今の仕事にめいっぱい。そんな事は起こりえる訳で、妙に引きずるものがありました。
アンダーグラウンドの被害者との事件への感じ方の違いが非常に興味深かったです。 またインタビューを受けた方の幼少期に何か共通点を感じてしまいました。 村上さんのおっしゃる通り、今の世に「受け皿」がないのが一番の原因かもしれません。