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世に棲む日日〈3〉 ( 司馬 遼太郎 )

御殿山の英国公使館を焼き討ちなど、江戸幕府のつきあげを次々としたあと、出家して、故郷に戻った高杉晋作。<BR>彼が閉じこもっている間に長州藩が大変動していきます。<BR>長州藩は幕府からの「5月10日から攘夷をする」という回答をそのまま実行にうつし、馬関海峡で攘夷戦争をはじめ、<BR>蛤御門の変、四カ国連合艦隊襲来そして、敗戦。<P>江戸幕府とは別に長州藩だけが歴史の大転換を迎えていきます。<P>特に印象深い場面は長州藩と四カ国連合との交渉の場面でした<P>舞台は壇ノ浦<BR>長州藩は単独で四カ国との談判をするために高杉晋作を交渉が交渉にあたります。<BR>その通訳をするのは伊藤俊輔<BR>たちあいに英国公使館通訳官アーネスト・サトー<P>そうそうたる登場人物たちが、日本の将来を変える交渉を始め読み応えがあります。

1867年(慶応四年)享年27歳の高杉晋作が、絵馬堂を前にして<BR>功山寺で挙兵したとき、高杉晋作50人、伊藤博文30人。たったこれだけで幕府に第一次長州征伐で、恭順の意を示し屈服した長州藩本体3000の兵に向かっていった。伊藤が「この人と死ぬんだ」と思ったのも無理もない。高杉のすごさは、頭の回転と人望によって大逆転をしたことだ。絵馬堂を前に、悲壮さの中にすがすがしさがある。この天才を思うとき涙が止まらなかった。「面白きこともなき世を面白く」有名な辞世の句だが、冷めた目と人生や社会への達観は坂本竜馬と双璧だ。坂本も高杉も慶応四年に亡くなり、明治という年を見ることができなかった。維新の功労者でありながら不憫であると思った。伊藤博文が後年下関で、高杉の作った「どどいつ」を宴会で聞き、芸者に聞いたところ、作った人の名前を誰も知らない。伊藤は往時を思い(死ぬ事を覚悟し、必死で国事に奔走した当時の事を思い)ボロボロ泣き号泣始めるのである。私ももらい泣きしてしまった。大事をなした事を民衆に褒められる訳でもなく、自己の使命として人生を全うした高杉を思い、爵位、総理、官位を極めた伊藤が泣いた。もう兄と慕い命を預けた高杉晋作はもういない。吉田松陰の日本人の純粋な使命感に命をとした武士の姿を見る。それは西郷、大久保とも違う。坂本とも違う。<BR>高杉晋作がなければ今の日本はない。<P>西郷、大久保、坂本がいなかったら日本がなかったのと同じように。

井上聞多(馨)のことから、この巻は始まる。いつもながら、司馬作品、出だしが素晴らしい。最初の数行で、読者は江戸時代幕末の渦中に放り込まれてしまう。そこから先は、インディー・ジョーンズさながらの冒険活劇+的確な歴史分析+人間論・組織論+人の運命を描写しつくす小説を読む醍醐の味。<P>高校生の時に読んで、30数年後にまた読んだ。吉田松陰のことは非常に尊敬しているが、高杉晋作が気になっていたので、この第三巻から。10代に読んだ時は、冒険活劇としてわくわくして読み進んだ。幕末の志士たちの行動の鮮やかさと、信じられないほどの劇的展開に心奪われた。でも今回再読してみると、志士たちの主張が攘夷論から180度転回して開国論になったり、藩内が勤王派から一転して佐幕派になったり、長州藩が京都で勢力を誇ったと思ったらいきなり幕府軍に攻め込まれたりする、そういうとんでもなくめまぐるしく激しい「変化」が、ちゃんと論理的に書込まれていたことに驚いた。若き日に一度読み、中年になって再読する。そういう楽しみも味わえる小説だ。

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