幼い頃、関西から関東に移り住んだ私にとってこの作品は、読みすすむにしたがって、辛い気持ちが募りました。深川という地元を愛する人たちの世界に、他の文化を背負って入っていく主人公の苦悩が他人事ではなかったです。この作品に出てくる人は、基本的に善人ばかり。そんな人ばかりが暮らしていても、ちょっとした行き違いで切ない思いを抱くようになってしまう。言葉少ないシャイな職人達の行動が、誤解や不幸を生み出していく。<BR> でも、でも、この作品は暗い貧乏物語なんかではありません。誤解や不幸を乗り越えて、不器用ながらに結びつきを大切にする家族の、小さな幸せ物語なのです。読後にその小さな幸せのありがたさが感じられる作品です。ほろほろと柔らかで、木目細やかな京豆腐のような味わい。一口目は、下地を付けずに賞味してみてください。
読み終わって作品に「感謝」しました。この作品を読めてよかったと思います。行き違い、思い込み、いろいろあった家族とそのまわりの人のお話でしたが、とっても感動しました。<P>人は、みかけや言動などでもはかりしれないその人だけの「思い」が誰しもあるんだなと、人の心の深さを思いました。<BR>一人一人のはかりしれない思い というものを考えると、「あの人はこういう人だ」「この子はこうだ」と決め付けてしまうことはやめようと思いました。<P>そんな 人の心の奥深さ を改めて考えた作品でした。
ちょっとした出来事が心をすれ違わせることもある。大きな悲しみが人を変えてしまうこともある。だが、永吉がおふみを、おふみが永吉を慕う気持ちは、出会いの頃からずっと変わることはなかったと思う。いがみ合い、憎しみあったとしても、家族はやはり家族なのだ。きょうだい同士の確執も、いつかは消えていく。お互いがお互いの本当の心を知ったとき、そこから新たな家族の絆が生まれる。読み終えたあと、家族の大切さをあらためて思った。