議論について、とくに私などにはやりにくく、つい感情的にブッてしまう反論について、よく説明されています。大変わかりやすく、なめらかに読めました。なかには筆者の文体の個性が鼻につくという人もいるかもしれませんが、私のように修辞学ドシロウトにはそのあたりわからずに読んでしまうので、逆に気にならないかも知れません。とにかく、内容について本当は難しい内容でしょうが平易に勉強できるので、進学前また就職前の高校生にもおすすめします。加えて、小学校の意見文指導の在り方と出来上がった作品についての考えは、私も同感です。
題名だけ見ると、相手の意見にケチをつけ、言いくるめるためのテクニック本のように見えますが、そんなことはありません。本書では反論を「ある意見を通じて自分の意見を作りあげるプロセス」と捉え、そのための考え方を紹介しています。<P>この重要でありながらなかなか本にすることのできなかった考え方を、本書は見事に解明し、分かりやすい形で私たちに示しています。特に後半の実例を通じた反論の仕方は、単に相手の意見に反論するだけではなく、自分の意見をよりよいものにしていくのに格好の題材となるはずです。<P>教育書なので実例が社会問題に偏ったり、筆者の専門であるレトリック臭が人によっては鼻につくかもしれませんが、読んで得られるものは絶大なはず。<P>自分の考えをより説得力あるものにしたい、相手との会話をより有益なものに変えたいと考えている方なら誰でもお勧めです。星五つ。<P>星は5つですが、10点満点です。
少ない知見で恐縮ですが、ディベート関連の本を開きますと(入門書は特にそうですが)ディベートとは何か(定義)、その進め方は(方法)・・・という表面的内容のものが多いように思います。<P>「ディベートをいかに充実させ得るか」「いかに相反する立場の中から止揚した結論を引き出すか」など、議論の中身を濃いものとする具体的な提言をしている書物は少ないように思います。具体例を取り上げつつ、そのような提言をしようとすると、書籍が大冊になってしまうということも多分にあるのでしょうが・・・。<P>この本は、焦点が明瞭です。ズバリ「議論の本質は反論である」とブチアゲています。実例は豊富で簡潔です。反論の自修法も示されています。ギリシャの古典修辞学についての説明などは少々まわりくどいようにも感じられますが、それはそれで反論の技術を養成するための良い動機付けを与えるものとなっています。<P>この大きさの本の中に、これだけの「中身」をよく納めたものだと感心いたします。「議論の本質」を知り、その「技術」を磨く上でたいへん良い書物であると思います。お勧めいたします。