息子を失った父親の悲嘆にくれる様子がしゃれた絵筆で描かれている。<BR>絵本としては、あまりにも悲しい内容であるが、父親の悲しみが伝わって<BR>くる分だけ、自分の命の重さに子どもたちの読者が気づくのでは。
深い川は激流でも、表面は穏やかにトロリとして見える。<BR>人の感情は、それが激しいものであればあるほど、<BR>心の奥底に封じ込められ、とても静かに「しん」として見える。<BR>僕の長女は、5ヶ月で生まれた。500gのペットボトル赤ちゃん。<BR>透き通った湿った体に、虫ピンのような指が5本そろっていた。<BR>でも、この世にいられたのは2週間だった。<BR>僕は命を取り替えたいと、真剣に思った。<BR>夜中に突然目が覚めて、叫びだしたくなるような思いのない人は<BR>実に幸せなのだと思う。<BR>そうして、そういう思いのひとつやふたつ、誰もが持ち合わせているのだろう。<BR>深い川は激流でも穏やかに見える。
本屋でイラストとタイトルが目に付いて読み始めたところ、最初の一頁から引き込まれた。胸が引き裂かれるほどの悲しみ。あらゆる悲しみがやってきた人のすべてがこの本のなかに入っている。洗練された文章もさることながら、悲しみにつかまってしまった人の心が私達にそのまま伝わる。それは個人的な理由はあれど、悲しみながら生きるひとの心は共通だということを私達に教える。悲しい。たしかに悲しい。けれども不思議な暖かさがある。それは、すべての人が悲しみに接しながらも生きているからだと思う。ぜひご一読を。