本書で圧巻なのは、意識とは何かについて語られる第2章です。<BR>本書によると、意識というのものは無意識による行動・判断の結果を、<BR>後追いでまさに「意識」することのようなのです。<BR>この本を読んでいる、まさにそのときに、本を読むということ自体が問われるわけで、<BR>「今、本を読んでいる自分の意思というのはどこから来ているのか?」<BR>本を読みながらでも考えずにはいられません。<BR>そして、「そう解釈している自分の意志はまたどこから来たのか?」<BR>巡り巡って本当に頭がおかしくなりそうです。<BR>兎に角、意識される理性よりも、無意識の行動・判断のほうが<BR>ヒトの人格を形成する鍵になっているようなのです。<BR>無意識層にまで訴える実体験というものが如何に大切か、改めて思いました。
同じ長さの2本の直線の両端に、不等号みたいな記号をつける。片方は外側に開いて、もう片方は内側に開く。有名な錯覚の図で、外側に開いている方が長く見える。<BR>これは脳が意識的に外側に開いている直線を長く見せている。もしこれが同じ長さに見えるようであれば、人間はこの地球に生きていくためには非常に苦労する。もしかしたら絶滅していたかもしれない。<P>脳は自分たちが考えるよりずっといろいろな事をして、人間の行動を助けている。目に映っている二次元の画像を苦肉の策で三次元化したり、実際には見えていない物を想像と予測で補ったり。知れば知るほど頭が下がる。<BR>この本はそんな脳の行動論理とそのメカニズムに迫る。池谷先生が高校生に行った講義を基にしているので、専門的な分野でも結構分かりやすい。<P>「脳ってこんな事をこんなふうにやって、それでこうやって人間を動かしていたのか!」<BR>と、思わず頷いてしまう納得の一冊です。<BR>前作の糸井重里さんとの共著「海馬 脳は疲れない」と合わせて、興味のある方は是非読んでください。
自分は神経科学を専門にしているが、最近の論文の内容を分かりやすく伝えているという点で秀逸だと思った。ひとつひとつの事柄について真新しいことはあまり無かったが、それでも各々に対して別の角度から考えさせられたという意味で新鮮だった。一方で、一般の中高生の脳に対する考え方を知れたという点でも良かった。欲を言えば、もう少し自己組織化とか複雑系の話に踏み入ってくれたらと思った。中高生、大学生を問わずに一般の人に脳のことをもっと知ってもらいたいという意味でお薦め。