私たちは外傷などの処置に対して従来手技(創部を消毒しガーゼで覆う)に疑問を持たずにきた。しかし著者によって正しい道が示された。以下に私の経験を示す。<BR>【長所】①従来であれば断端形成手術をしてきた手指の皮膚欠損症例でも閉鎖治療により良好な結果を得た。②従来法ではガーゼ交換と消毒の度に出血や創部痛などの苦痛を強いてきたが、閉鎖治療ではそのようなことはなく特に小児例では好評であった。③顔面擦過創では治療中の外観も良好であり、洗顔なども可能であることから好評であった。<BR>④創からの分泌液量が少なくなってくると2日から3日間隔の通院でも問題なく、通院日数も短縮できたという印象がある。<BR>【短所および問題点】①従来の慣習にこだわる患者・医療者に対してのコンプライアンスは低かった。②ハイドロコロイド特有の臭いや創からの分泌物の臭いを、悪臭と感じ、創感染と判断する患者・医療者が多かった。③調理用ラップを使用することに抵抗を感じる医療者が多かった。<BR>【考察】閉鎖療法の短所は解決できるものである。消毒は創治癒の阻害因子であり効果も期待できない。創感染の有無と悪臭は無関係であり、感染の3要素(発赤・腫脹・疼痛)があるか観察すべきである。創処置では医療行為による感染(交叉感染)にこそ注意すべきであり、使用する材料は清潔であれば良く、滅菌の必要はない。また、傷は「濡らしてはいけない」「ガーゼや薬剤で乾かして直す」など痂皮形成を促す風潮があるが、痂皮は異物であり感染源となることは明白である。今後は創傷の管理方法について医療や介護関係者だけでなく、一般市民にも啓蒙していく必要があると考える。
納得のいく1冊でした。この治療法が適していると考えても、悲しいかな私はNs.で、Dr.がOKしない限り行なえないのが現状。自分自身がもっと知識を深めようと、購入しました。只ドレッシング材を貼って放っておくのではなく、観察点や注意すべき点などが詳しく書かれてあったり、消毒が何故良くないのかも説明されていました。<BR> 実際にお年寄りの弱い皮膚でも、きれいに傷が治っていくのを見ていますし、絶対良いのはわかっているけれど、他者に説明できるポイントとなることが今1つ明確でなかった部分が、この本を読んで納得できました。スタッフ間での情報提供や、医療従事者でない友人に説明するのにも役立っています。<BR> すり傷の絶えない子どもも居ますし、学校の保健室でも取り入れてもらえればと願っています。それには、一般的にもこの治療法を浸透させていかなければ、保護者の理解が得られないでしょうね。じみちな努力が必要かも・・・。
著者のことは最初ホームページで知りました。その主張がすばらしかったのでこの本や他の本「創傷治療の常識非常識」を購入しました。内容はみな似たりよったりですが、この本は創傷の治癒機転がきれいに説明されています。このようにきれいに治る治療法は患者に大きなメリットとなりますから、医療関係者は一読すべきでしょう。