モチベーションと意志の力(willpower)の違いが書かれているだけでなく、モチベーションの次に来るのは、“意志の力”であることを予言しているような本です。<P>「もし船を作りたいなら、男たちをかき集めて森に行かせ、木を集めさせ、のこぎりで切って厚板を釘で留めさせるのではなく、海へ漕ぎ出したいという願望を男たちに教えねばならない」<BR>リーダーとは、これが実行できる人のことをいうのだろう。<P>組織がなぜ必要か、そして組織にとっての意志の力とは。<P>とにかく、一度では理解できないほど奥の深い内容です。何度も読み返すことでしっかり身についてくる良書です。
この本はタイトルでやや損しているかも知れません。以前ベストセラーとなった『脳内革命』を彷彿とさせてしまうのですが、本書の内容は極めて真摯なものです。<BR>前半は個人について、後半は組織を対象にして、「あくせくしながらも結局は何もしない」仕事ぶりが生まれてしまう背景要因を分析して、具体的に有効な意識的行動を取るためには、内側から湧き上がる意志(本書ではアクション・バイアス(行動への飽くなき姿勢)と呼ぶ)が重要であることを、実際の企業のケースに基づきつつ心理学的側面を援用して示しています。ともすれば、給与・待遇が良ければ人は働くだろうと考えてしまいがちですが、それは「モチベーション」を与えているに過ぎず、本書ではそれを越えて意志の力を発揮するまでは、真に効果的な行動に結局はつながらないと述べられております。<BR>単にビジネス場面においてのみならず、広く人の生き方まで射程に含んだ示唆に富む良書だと思いました。
筆者のスマントラ・ゴシャールはポーターやミンツバーグと並ぶ戦略論の第一人者であり、欧州の経営学の教祖的存在とのこと。本書はそのスマントラが55歳で早逝する直前の書であり、以前より親交のあった訳者が翻訳を買って出たというものである。<BR>本書は何かを成し遂げる為のメカニズムに関して、主として欧州企業の事例研究に基づき解説し、意志の力を生かして行動を起こし、組織の持つエネルギーを結果に繋げるという経営論・リーダー論を説いたものである。<BR>社員の目的意識を伴う行動を促すにはモチベーション以上のものが必要であると言っている。ここでいうモチベーションとは外部からの刺激や何等かの報酬が得られるという期待が誘因となっている。これに対して意志の力とは特定の目標に対して個人的にコミットすることから生まれるものであるが、それは何か人から与えられた目標ではなく、自分で選択する自由がある中から出て来たものである必要がある。<BR>また目的意識をもって行動する人々に溢れる組織を構築するには、各人のスペース(土俵)が必要であり、社内でサポートするネットワーク(仲間)の存在が大きく、これを企業文化に組み込んで行くことが求められる。<BR>「なぜ多くの人が、能力もあり、とるべき行動も頭では理解しているのに、それでもなお、行動をとらないのだろうか」というのが本書の問題意識であり、同様の疑問を持つ方にお奨めの書である。