一人のバイオリン職人の生涯をまとめたものである。しかし、良くある開発物語、職人伝とは違う。物語は朝鮮半島の悲惨な歴史、家族の絆、バイオリンに対する追求等、様々なエピソードで織り成される。特に「人」との出会いが大きな比重をしめている。日本占領下の朝鮮でのバイオリン好きの日本人の先生、零戦の設計者糸川英夫氏、朝鮮戦争の前線に送られる米兵、著者の初期のバイオリンの良さを認めいつまでもバックアップしてくれた篠崎弘嗣氏、アイザック・スターン、イツァーク・パールマン、ユーディ・メニューインを始めとする多くのバイオリン奏者、それぞれが彼のすすむ道を決め、技術を向上させていく。<BR>また、世界で訪問した国は119にのぼるとの事。沢山の銘器を実際に見て回るだけでなく、ニスに使う染料や樹脂を求めてアマゾン川の上流へ丸木舟で乗り入れたりもしている。<BR>彼の信条「芸に満足と諦念は禁物」はコンピュータ技術者としての私にも通じる。ミミズの鳴き声にストラディバリウスの音を聞く感性。終わりの無い探究心が世界でも一流のバイオリン職人に彼を育てていく。<BR>スケールの大きな物語である。読みながら涙を流した部分も何箇所かあった。<BR>TVドラマ化されるとの事。原作のどれだけを表現できるのだろう。TVで満足せず、是非この原作を読んで欲しい。
テレビで見てもっと深く知りたくて本を購入しました。バイオリン作りに情熱を傾ける陳さんの生い立ち・苦労・受賞の喜びが良く伝わってきました。日本・韓国・アメリカそれぞれ敵対した歴史があるけれど、その中を生きて祖国韓国は海の親、日本は育ての親、アメリカは恩人と言う陳さんの言葉に感動しました。
<BR>バイオリン作りの名人、陳昌鉉さんの人生を書いた本です。私はこの本から以下の7点を感じました。<P>①陳さんが自分の夢をひらすら追いかけ、様々な障害を乗り越えていく 力強さ、一途な思い、そして迫力。<BR>②戦争の悲惨さ、戦時中の人間の恐ろしさ。<BR>③子供が母親を思う心、母親が子供を思う気持ち。<BR>④若いときの粗食と肉体労働が健康の秘訣では?<BR>⑤何でもかんでも揃ってないとできないと言うより、できる事から一つ 一つ進めていくことが大切な事。<BR>⑥陳さんの作ったバイオリンを見てみたい。<BR>⑦物が無い時代のほうが心が豊かなのでは?<P>読んで良かったなと思いました。しかし、ただし聞き書きという手法のせいで、文章がきれい過ぎると感じました。もう少し陳さんの言葉そのままで書くと違う面や迫力が出てきたのではないでしょうか?