分厚い本です。<BR>でも、よかった。<BR>今年見つけた本でいいものを一冊すすめるのなら、私はこの作品を推します。<P>作品は「明治三十二年 東京」というタイトルの序章から始まる。<BR>東京で行われた史談会で、新選組の生き残り隊士が、自分の見た新選組を語る。<BR>新選組の有名どころで明治期まで生きた人物と言うと斉藤一、永倉新八、島田魁などが有名であるが、<BR>冒頭新選組を語る老人が一体誰なのか、皆目わからない。<BR>じき「阿部隆明」という名前が明かされるが、その「阿部隆明」が誰なのか、まったくわからない。<BR>ウッ、となるほど、たった4ページきりの序章が胸に迫る。<BR>阿部隆明、昔の名を高野十郎と言い、阿部十郎と言った、という提示で序章は終わる。<BR>が、そこまで明かしてもらっても、彼が誰なのかわからない。<BR>新選組は、その人物がどこに付いたのかで運命が大きく変わる。<BR>試衛館派であれば安心して読めるし、伊藤派であればいずれ来る結末を思わずにはいられない。<BR>しかし、無名の隊士、阿部の行く先を私達は知らない。<BR>そして阿部自身も、うやむやの雲の中のように、自分の行く先を計りかねている。<BR>彼は「不安」である。<P>この作品は、どちらかと言うと主題を「伊東甲子太郎の暗躍」に置いている。<BR>語りの中心に「試衛館」を持ってこないのだ。<BR>物語は常に三人によって描かれる。<BR>「土方を見る」尾形俊太郎、「伊東を見る」篠原泰之進、そして「何を見るべきかわからない」阿部十郎である。<BR>この三人の名を挙げて、それぞれのポジションがわかる人は多くないと思う。<BR>けれど、だからこそ、面白い。<BR>重く、硬く、分厚い小説だけれども、久々にいい本を読んだ。<BR>尾形の横にいる、山崎の瓢脱さが心地いい。<BR>篠原の先にいる、伊東の高潔さが愛おしい。<BR>そして、阿部に触れた人たちの思いが、心に残る。<BR>いい小説だと思う。<BR>とても好きな作品です。
淡々としたクールな描写なのに、とても熱い小説です。<BR>普段見たくなくて目を逸らしているもが、あっさり描かれていて気持ちを揺さぶられました。特に阿部の焦りや絶望が生々しくて自分を見てるようでした。<BR>伊東、篠原、三木、浅野、尾形、山崎、斎藤、土方、近藤、沖田、藤堂<BR>多くの隊士が登場しますが、それぞれ格好良かったり情けなかったりと魅力的で面白いです。<BR>「幕末の青嵐」とリンクしてるのかなという箇所もあって、前作を読んだ人はそこも楽しめると思います。<BR>明確な答えは出ない、でも何か大事な事が描かれていてそれを掬い上げたくてまた読み返したくなります。
淡々としたクールな描写なのに、とても熱い小説です。<BR>普段見たくなくて目を逸らしているもが、あっさり描かれていて気持ちを揺さぶられました。特に阿部の焦りや絶望が生々しくて自分を見てるようでした。<BR>伊東、篠原、三木、浅野、尾形、山崎、斎藤、土方、近藤、沖田、藤堂<BR>多くの隊士が登場しますが、それぞれ格好良かったり情けなかったりと魅力的で面白いです。<BR>「幕末の青嵐」とリンクしてるのかなという箇所もあって、前作を読んだ人はそこも楽しめると思います。<BR>明確な答えは出ない、でも何か大事な事が描かれていてそれを掬い上げたくてまた読み返したくなります。