最終氷河期の終わりから現在に至るまでの、数十年から数千年スパンでの気候変動と、<BR>文明の盛衰との関係を論じた書である。<P>現在の地球の気候は、最終氷期以降比較的安定しいると言われているが、<BR>本書によれば、地域によっては、かなりの変動が起こっているようである。<P>ただし、気象学の本ではないため、その変動のメカニズムについては述べられない。<P>本書によれば、気候変動を原因として文明は発展もし衰退もするという。<P>例えば、西ヨーロッパの気候について、教科書では地中海沿岸は地中海性気候、<BR>それ以北は西岸海洋性気候と教えられるが、この境界は安定したものではなく、<BR>年代によって南北に大きく変動することが述べられており、<BR>現在の気候状況をもって、古代文明を評価することの危うさを感じる。<P>ローマ全盛期のヨーロッパの気候がどうだったのかを考えることなしに、<BR>ローマ帝国を語ることは出来ないということである。<P>昨今の地球温暖化問題では、地球全体の平均気温が1,2℃上昇するのをくいとめようと、<BR>各国が必死になっている状態であるが、変化の程度はどうであれ、その程度の気温変動は、<BR>過去の地球に何度も起こっていることで、今後CO2の排出を抑制したとしても、<BR>いずれは別の原因で生じる可能性の高いものである。<P>むしろ、そのような変動に対して、柔軟に対応できる文明を築き上げるほうが、<BR>文明としての発展は期待できそうである。<P>気候を安定させることが全てではないということを、教えてくれる一冊である。
まずこの本の大半は、理学の学術文書のような事実やその図等を用いてデータをつみあげて述べていくような表現ではありません。そこに暮らす人々を描き出すような物語形式の語り口です。<BR>また扱う範囲もヨーロッパ、北アフリカ、中近東、北・中アメリカが中心で、中世までです。東アジアがほとんどでてこない話で、ちょっと尻切れトンボのような感がありますが、それでも非常に示唆にとんだ壮大な話です。<BR>特に文明が小さい気象変動に耐えうる生活様式・社会を獲得することと引き換えに(稀な発生率の)大きな気象変動に対する対応能力を失う一方で、地球の気候が数百年単位で大変動してその都度文明への深刻なダメージを与え生活様式・社会の変化を促していくさまがわかりやすく描かれえています。<BR>所与の環境で拡大した古代社会が突然の気候変動で変化していく様は、マークブキャナンの「歴史の方程式」にもつながるような非常に面白いです。
人類の歴史を気候の点から捉え、物語風に書き記した本<P>寒冷乾燥化は食糧の生産能力を低下させ、都市の滅亡、人々の離散移住に繋がる<BR>温暖湿潤化は食糧の生産能力を向上させ、都市の繁栄、人々の集積に繋がる<P>人類がベーリング陸橋を渡り、アメリカ大陸に到達した事<BR>エジプト王国・ローマ帝国が繁栄し滅亡した事<BR>そのいずれにも気候変動による食糧の生産能力の変化が原因であるとする