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敬虔な幼子 ( エドワード ゴーリー 柴田 元幸 )

何度も何度も読み返す絵本って大人になってから減るのは何故でしょう。<BR>それは、物語が現実とは違う事を分かっているからではないでしょうか?<P>現実に弱い者は救われない。現実を突きつける物語は大人の心に突き刺さります。子供の頃読んでた幸せな寓話から現実へ。説教臭さのない、淡々と最小限の表現で描かれているゴーリーの本は冷たさを感じないのは何故でしょう。

日本語訳の、ゴーリー本、すべて買いました。これも即。河出書房から、柴田元幸訳でちょっとずつ出ているのですが、毎回、前回のストーリーとはクルリと変わった内容で、訳者の研ぎ澄まされた選択が窺い知れます。「いたいけな子供が殺されちまう、ウッヒッヒ」といったような、ありきたりでガッカリするブラックユーモアとは一段ハズれているのがゴーリーさんの魅力。この本でも、登場する男の子をからかっているようで、いとおしんでいるようで・・・面白い。ははははは。本の大きさも、初めの三冊は豆みたいにちっちゃく、次の三冊はB5くらい、で、今回はその中間くらい。作る側の〈熱心さ〉が分かり、大切にしたい!と感じいるハズ(思うツボだ)。全本、原文〈英語)付きなので、ゴーリーの本文も愉しめますよ。ほんと、いーですね。お愉しみあれ。

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敬虔な幼子&nbsp;&nbsp;&nbsp;これは、神の言葉に過激に沿って生きた男の子の絵物語。主人公ヘンリー・クランプは、3才になったばかりというのに、己の邪心に気づく。それにもかかわらず神が自分を愛してくれると知って、聖句や聖歌をよく覚え日々に唱えた。波間から舞い上がるカモメを見て彼は妹に言う。「僕が死んだら、あの鳥のように天に昇るんだよ」。 朝に夕に何か手伝うことはないかとどういうわけかトンカチ片手に両親にたずね、お菓子を我慢しては貧しい者に小遣いをあげ、聖書を読まない年上の少年たちをいさめ、書物に神の名前が軽々しく扱われていると言って念入りに塗り潰す。心ならずも悪魔のささやきに乗ってしまった時は、激しく後悔して改悛の祈りを捧げた。 そしてある寒い冬の午後、善行のあとの帰り道に、大粒の雹(ひょう)にあたって風邪をひき、あっけなく翌日には死んでしまった。ヘンリーわずか4歳と5か月。最後のページは鳥の彫刻がついた白い墓の絵。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;透明感のある絵と文章であまりにさっさと進むので、立ち止まることもなく一気に読まされてしまう。だが、純粋というものの嫌味と凄みがあとにぽんと残されて、あどけない天使のようなヘンリーの姿が、紙一重で小悪魔にも感じられてくる。 <p>&nbsp;&nbsp;&nbsp;実は1966年、ゴーリー自ら興した出版社からほかの本と2冊セットで500部限定出版された本書初版の著者名は、エドワード・ゴーリー(Edward Gorey)ではなく、アナグラムの別名ミセス・レジーラ・ダウディ(Mrs Regera Dowdy)だった。「ダウディ」には、流行おくれの野暮とか、だらしないの意味がある。やっぱりゴーリーらしい反語的物語。単純なストーリーとみせかけて、深い。(中村えつこ)
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