この本を読むと、本当にもやっとします。でも嫌な感じじゃなくて、不思議なもやもや。妖しい塔なのに人もいて、水が満ちている部屋や人が倒れている部屋。なんなんだと思いながらも目が離せない。そんな本です。
私のお気に入りは2Pめ。<BR>比較的まともそうに見えるこの人。<BR>でも彼女おかしいんだよ。<BR>早足のような前傾姿勢、でも手もスカートの襞も静止してるんだ。<BR>まるでドアの境から忽然と出現し、廊下の暗がりへすべっていくように見えるんだ! <BR>私にはいっそ12Pめのおっさんの方がまともに見える!<BR>いやしかしおっさんは…何を見てるんだ? <P>この手すり…落ちるのを防いでいるのか。<BR>でも向こう側は壁じゃないのか? <BR>必要ないはずの手すり、必要なはずのおっさんの…? <BR>ん? でも足元は…。<P>どのページも見れば見るほど味が出る。<BR>微妙なニュアンスが想像力を掻き立てる。<P>ゴーリーの思う壺に心地よくはまりました!
ウェスト・ウィング(西棟)の中の情景が、何の文字も無く<BR>一定の構図で淡々と、描写されていく。<BR>見ていくうちに、ひたひたと不安がたまってくる。<P>そう、この本を見て感じるのは、恐怖ではない。<BR>その一歩手前の段階、不安を感じさせられるのだ。<P>今までに何があったんだ・・・これから、何が起こるんだ・・・<BR>これは、何だ・・・あれは、誰だ!<P>恐怖の対象が、直接描かれる事はほとんど無い。<BR>対象が解かれば、不安もある程度解消される。<BR>ここでは、最後まで何も解からない。さらにその先を想像すると<P>ここは、何処なんだ? 何処の西棟なんだ? 今は、何時だ?<BR>だいたいなんで来たんだ? 何人で来たんだ? 一人で来たのか?<BR>私は、一人でここに居るのか!?<P>ゴーリズム満載で。エドワード・ゴーリーの魅力が染み出してます。<BR>僕は、この本で初めてゴーリーに出会いました。<BR>ぜひ、ご一読を。そして君もりっぱなゴーリストを目指そう!