ちょっと驚くほど上手くまとまった本で、「神道」についてとりあえず一通り知ることができる。確かに「日本人」なら一家に一冊は常備しておいてもよいと思えるような便利な書物で、たぶん類書のなかではベストだし、おそらくこれより優れたものが今後でてくることはないだろう。これ以上ふみこむと専門的になるし、この本のようなコンパクトさは望めなくなるだろうし。神話・歴史や神社の建造物についてのやさしい解説から、冠婚葬祭の本来的な意味に加えそのマナーまで、とにかく丁寧に教え示してくれる。そして豊富にのせられた図や絵によるまとめがとても簡明で、聞きなれない言葉を理解するための助けになる。<BR>「自然の恵みに感謝して、自分が住む土地にあつまる霊魂(神)をもてなしてまつる」という神道の本質をとらえた著者は、そこから用語の講釈だけでなく、この国の土地に根ざした生き方についても所々でさらりとふれている。私たちを生きやすくそしてやがては死にやすくしてくれる心の道こそ、「神道」であるのだろうと思った。
武光誠先生の著書は分かりやすく面白い。どこかで断絶された歴史をもつ20世紀生まれの僕に,安堵感を与えてくれる。いつしか僕は世の中を嘘まみれのものであると考えるようになっていた。というのも,世の中の決まりごとは,合点がいかないことばかりだ(と思っていた)からだ。例えば,賽銭は,神社の儲けのために存在すると思っていたが,そうではなく,知らぬ間に犯してしまった罪を禊ぐために投げられるものであったという。拝堂で手を叩くのは眠っている神様を叩き起こすためのものだと思っていたが,そうではなく,神に出会えた喜びを表現するものであったという。武光先生は,そのように勘違いした人間の視点を見抜いたような語り口で,読者をどんどん引き込んでくれる。
日本人の日常生活に溶け込みながら、国家神道の反省から教わることなく知らなかった我々の風習がよく分かり、「へぇ」の連続です。<P>前半は、日本の歴史の復習ですが、学校での教え方がいかに間接的で分かりにくいものであったかと感じます。日本書紀の書かれた目的、国家神道が排外主義に至った理由などが平易に書かれています。<P>後半は、神殿、鳥居、賽銭、おまもり、絵馬、みこし、おまつり、正月などの年中行事の由来が書かれています。<P>神道は、「人間の良心に全幅の信頼をおく人間中心の宗教」であるというと、少し気恥ずかしい気もしますが、全体を読むとそうかなあという風にも思えます。<P>なお、筆者は偏狭なナショナリストや天皇崇拝論者ではないようですので、ご安心を。