Soccerを通して個々の文化を、とか、そんなフレーズは世の中に散乱しているが、この著作はそんな低俗な日本の<文化人>と称する輩を文字通りSoccerFootballで蹴飛ばしてくれる小気味よさがある。
わずか一ヶ月の日本版Rebecca Westです。でも人間の記憶とその刻印は時間の関数ではないということをあらためて再確認しました。あともう一つは、人間は望んでいる人に必ず出会えるという彼の確信。もうただのサラリーマンで、欧州には遊びでしか行かないし、面倒なことにはかかわりたくないという私も、この宇都宮さんの、確信には逆説的な意味ながら、寂しいながら、納得しました。この地域はほんとにわれわれのような部外者の日本人にはかかわり方が難しいね。それに若さでぶつかった宇都宮さんの経験は何事にも変えがたいと思う。後はサッカ-選手というほんとにある一瞬にしか輝けない選手と競技をサブ・モティーフとして選んだところがこの旅行記にもう一つの陰影を与えている。処女作はその後の方向を決定づけるというが、この後の彼!変貌が楽しみです。
本を読むまで宇都宮さんのことは知らなかったのですが、彼の視線(カメラ)が追う人々の姿は<BR>今までに見たどんなメディアのものよりも「生きて」見えました。<BR>ユーゴという国が本当に消えてしまった今となっては余計にあの文と写真が胸に染みます。<BR>私にとって出合えて良かったと心底思えるような1冊です。