名言集を作る作業は、気の遠くなるような労力と時間を要する。作品のなかに現れる一言一句を、作品全体との関係の中で正しく理解した上で、一言ですべてを言い尽くすような珠玉の一文を選び出す。こうして選ばれた名文を前に、われわれは(少なくとも私は)、沈黙するか唸るかしかない。「なるほど」などと口にした瞬間に、名文の「うまみ」がどこかへ行ってしまう。そんな気がする。まして、大家の名文に対して異議を唱えたり、これを敷衍して自説を展開するなど思いもよらない。これは、おおかたの評判に引かれて、作者を偶像視しているからであろう。また、作品をすべて読んでいない後ろめたさもある。そして、何よりも、名言そのものの表面的な理解さえおぼつかない知識と自信のなさが、何かを言おうとする口をふさぐ。<BR>しかし、本書の著者は、各名言を正確に、誰に頼ることなく、自らの目と耳を通して理解している。このことは、各名言につけられた日本語訳を見ればよく分かる。そしてその上で、自らの考えを述べる。それは、本書の「はじめに」に書かれているように、「スピーチを行う必要のある企業の管理職」や「洗練された英語をモノにした方」への手引きであり、「上を向いて一歩踏み出したい方」への応援歌にも聞こえる。しかし、それだけではない。より正確には、「偉人たちとの一対一の対話」を戦い抜いた戦士が物した戦記でもあり、また英語という便利な(しかし一般には操縦しにくい)乗り物に乗って古今東西を歩いた旅人の旅行記と言ったほうがあたっているだろう。
チョイスされている言葉が厳選されている。個人的に「名言」というのは短く・わかりやすく・ササりやすいものでなければいけないと思っていますが本書に収録されているのは全て該当、本当の意味でのベスト版と思います。本書頻出のバーナード・ショーや、アインシュタイン、ケネディ兄弟らの名言とかはアアもう知ってますという方には加藤祥造氏の「英語名言集」「ハートで読む英語の名言」で新しい発見があるはず。こっちもおすすめです。<P>こういう本って、一読して終わりでなく、気がついたときに手にとってフレーズを覚えたいもの。スピーチねた、日本人・外国人と話すときの攻めねたにもなりますし。買っておいて絶対損なし。
この本には、いつか実際使ってみたい名言がたくさん入っています。例えば、サマーセット・モームの「中途半端な人間だけが、いつも自分の最高レベルにある」(Only a mediocre person is always at his best.)なんか気に入っています。決して、自分から「絶好調!」などと口走ってはいけないんですね。それから、私の大好きなサミュエル・ウルマンの「青春」が全文載っています。ご存知でない方は是非!