人間は他の動物よりも複雑な社会性を身につけてしまった。<BR>生活が豊かになり、多様な価値観を認める一方、一定レベルの社会的常識からはずれることを心理的に許さない、少しゆがんだルールの中で我々は生きている。<P>発達障害を持つ人たちは、一般に守るべきと思われている社会的常識を理解できないということを素直に受け入れることができるほど、発達障害が広く正しく認識されていない。<P>病気と言ってしまうと、人は構えてしまうと思う。<BR>もっと大らかに、個性として認知できないのだろうか。<BR>ちょっととんがった個性を持つ人でも今の社会の見る目は厳しいけれど、個性として捉えられていれば、価値観のひとつとして認知されやすい。<P>いずれにしても社会全体がもっと大らかに寛容でなければ、発達障害と診断される人にとっては生きていくのが厳しい社会であることは間違いない。<BR>寛容になるためには、まず正しい知識を持つことが大事。<BR>まずは本書を読んでみよう。<P>自分の子供がそうかもしれない・・・そう感じたとき、知識を持っていればその先は何も知らないときよりも明るいと思います。
自閉症に関する本は数冊読みましたが、これはまったくもって、優れた本だと言えます。新書で安価に読めてしまうのが申し訳ないくらいです。<BR>さらには、自閉症スペクトラムとはなかなか一緒に論じられない、LD(学習障害)やADHD(注意欠陥多動性障害)も取り上げられていて、これまでの書籍で抱いた「もう一歩、痒いところに手が届かない」という思いも払拭されます。<BR>「自閉症とは」といういかめしい診断基準をいくら知っても、「なぜかそうであるかというとね、世界がこのように見えているからだよ」ことを理解しなければ意味がありません。同時に、その原因は何なのか、どう接していけばいいのか、を知らなければ、役に立たない単なる知識に終わってしまいます。その辺の記述がとても丁寧で、分かりやすいのです。<BR>この本が、大いなる啓蒙書として、多くの人に知られることを願います。<BR>しかしあくまで、知識として知っておきたい人向き。実際に自分の子どもとか身内に発達障害の人がいて、「それではどうすればいいの?」という話になってくると、別の本を探した方が良いと思います。