イギリスの街頭監視カメラやニューヨークの「割れ窓理論」の実践など、近年、欧米の犯罪対策について耳にすることが多い。私は、これらの対策について、個々の事象としてとられていたが、本書を読むことで、「犯罪原因論」から「犯罪機会論」へと大きなパラダイムシフトが起こっていることを初めて明確に理解できた。<BR> そして、その考え方は、見通しをよくするなど「街を犯罪が起こりにくい場所にする」というハード対策にとどまらず、地域・学校・司法・警察などのあり方にまで影響を及ぼすものであることが、外国の豊富な具体例により解説されている。また、理論に基づき従来の社会制度を変革し新しいシステムをつくっていく面での英米人の能力の高さもよくわかる。<BR> 単なる「防犯対策のノウハウ」といった本ではなく、しっかりと調べ、きっちりと構成し、理論面も実践面も過不足なく解説した非常に有益な本です。
犯罪成立の原因を、加害者の人格や境遇に求めるのがこれまでの「原因論」だが、犯罪を起こさせるような環境こそ犯罪を成立させる原因になるのだというのが本書の「機会論」である。「機会」を減らすことでいかに犯罪を減らすかが各章で紹介されており、有名な「割れ窓理論」にも言及している。<BR> 欧米、とりわけイギリスでの「機会論」に則った施策、法整備、少年犯罪への取り組みが紹介されているが、正直「ここまで法制化するのか」と驚嘆した。<BR> 私の意識がまだまだ低い、ということか!?
日本では犯罪が起こる度に、犯罪者の犯行動機や原因を解明しようと躍起になっていますが、解明は容易ではなく、解明したとしてもその原因は複雑で完全に無くすことはできません。ここでは、欧米諸国で成功している犯罪機会論(犯罪の機会を与えないことによって犯罪被害を防止する「予防」を目的とした犯罪論)を基に、日本が必要としている新しい犯罪学が書かれています。<P> なかでも、「入りやすい場所」と「見えにくい場所」に注目すれば犯罪は防げるという犯罪論の基準。また、秩序違反行為の放置が犯罪発生を促すという「割れ窓理論 」は参考になりました。その他にも、欧米諸国での成功例を数多く取り上げて、犯罪対策が詳細に書かれてあります。<P> 自治体や町内会の活動だけでなく、身近なところから犯罪予防ができることを学びました。実用的な本になっており良書です。