1965年からギターを弾き初め、齢50を過ぎた今もなお、弾き続けている。まさに、1960年代末から1970年代前半は、本書に出てくる「放送禁止歌」、「イムジン河」「竹田の子守歌」「チューリップのアップリケ」「友よ」「パフ」「私たちの望むものは」などはよく歌っていたものばかりだ。特に、しっとりと奥行きのある歌であった赤い鳥の「竹田の子守歌」は、お気に入りの歌でもあった。しかし、本書を読み進める中でそんなノスタルジックな想いに浸ってはいられなかった。後藤悦二郎氏と同様、その歌の奥に秘められた歴史的社会的事実を知り<驚き>とともに、心騒ぐ青春時代に引き戻されたかのような気分になった。さらに、森達也氏が解き明かす放送禁止歌の謎、今も生き続けるまぼろしの如き規制主体への不気味さは、今新たなる<驚き>とともに、同時代を生きる者として何らかのレスポンスをせねばとの思いも沸き立たせた。今、そんな過去と現在を結ぶ複雑な思いをこめて、もう一度あの歌たちを歌ってみることにしたい。
ひとつの小さな疑問から出発して、様々に悩み、迷ったあげくある発見に至る。作者がその過程を踏んでいくことにほっとしました。「自分で見、聞き、知り、考える」勇気を与えてくれます。<P>世界に絶望している人は必読。
以前、「放送禁止歌」と題したドキュメント番組が放送された。「放送禁止歌」を他ならぬTVで「放送」するという試みに惹かれて、深夜の放送にもかかわらずチャンネルを合わせたのだが、TV界の「規制」に対する真摯な問いかけが非常に印象的だった。そしてこの番組が本になったと聞き、早速購入した。それが本書である。本書では、番組では語り尽くせなかった内容を、より深く掘り下げている。歌を「規制」するものの正体、そして規制された「歌」の本当の姿が描き出されている。TVを見た人にとってだけでなく、独立した書物として読んでも非常に興味深い。メディアに関わるすべての人が、すなわちメディアから情報を受け取る私たちも含めて、「差別」や「規制」について考えるにあたって、読む価値の!ある本だ。