単行本でベストセラーになった本の文庫化。もちろん、いろいろ加筆修正はしたのだろうけど、今読んでも違和感はなし。森永さんのスタンスは極めて一貫していることがわかる。<BR>その考え方には異論もあるだろうが、世の中の経済評論が大局ばかりを追っている中、この本を読んでやっと中立くらいの姿勢を保つことができる、と言えるかも知れない。<P>後半はかなり細かい生活術なのだが、大上段からものを言うエコノミストが多い中、ここまで具体的なことを説く本は貴重。実際に使える・使えないは別にして、知っておいて損はないはず。
2003年発行の「年収300万円時代を生き抜く経済学」と「続年収300万円時代を生き抜く経済学」を再編集して文庫化したもので,2冊のエッセンスが詰まっているようです.原著は2年前の本ですが,内容的にもそれほど時代遅れの感じはしません.原著は読んでいませんが,文庫になったので読んで見ました.<P>第1章は,日本を取り巻く経済・金融の状況について概説していますが,著者の専門分野のため多少難しいことが書いてあります.そして,第2章では多くのサラリーマンが年収300万円はおろか,100万円台の時代がやってくると予測しています.第3章以降では,「勝ち組(高収入な人たち)」になることはあきらめて,幸せに生きることを探しましょうと説いています.<P>私は,プロである限り報酬を追及するのは当たり前のことで,仕事にやりがいがあれば報酬は二の次というのは多少アマチュア的であると思っていました.しかしながら,著者によると,「『これから日本が市場原理主体の社会に変貌する中で,能力や成果が正当に評価されるようになるのだから,きちんと仕事で成果を出していけば,それが出世に結びついていく』と考えるのは,完全な誤り」だそうです.それでも「勝ち組」になりたければ,家庭やプライベートは全て犠牲にし,上司にはゴマをすり,同僚の足は引っ張り,できそうな後輩は早めにつぶす,他人のよいアイデアは横取りする,ここまでしないとこれからの世の中「勝ち組」にはなれないときっぱりと言い切っています.そして,そうまでして「勝ち組」なりたいですか,というメッセージです.<P>ここまではっきりと言われると,少し考え方を変えざるをえませんね.