本書の“輸出入の本来の目的は「交易」”(p.155)、“いいことずくめでない自由貿易”(p.158)、“自由貿易を貿易戦争にする現代技術”(p.168)、などを読むと、米国経済の根本課題が当時のアナリストの予想外の所にあることを指摘した『貿易は国を滅ぼす』(ラビ・バトラ著1993年)を思い出した。<BR>ラビ・バトラの主張は、“米国国民の生活水準の低落を招いた元凶は、自由貿易の拡大である。自由貿易の拡大は、製造業の労働生産性を損ない、一般労働者の実質的所得を低落させる。つまり、一国の経済的繁栄は、貿易の拡大ではなく、国内の製造業の発展によって行われるのである。従って、ある種の保護貿易主義こそが米国経済再生の鍵である。関税率を1973年以前の状態にまで引き上げ、国内の製造業を外国からの輸入攻勢から保護した上で、競争を活性化させることが米国経済を復活させる最善策である。”というものである。<BR>こうしたラビ・バトラの直感に、本書の著者は理論的解明を与えたと言える。著者の理論が基本的に正しいことは、ラビ・バトラが直感では気づかなかった広汎な課題を捉えることに成功しており、しかも課題の深堀ができたお陰で検討すべき価値ある対策方法を明確に示し得たことである。<BR>経済を分かりやすく説いた小室直樹が絶賛した上記ラビ・バトラの著書を上回る本書の登場によって、日本が経済で新たなリーダーシップを取ることが可能になる。
経済素人の私でも、最初から最後まで興味深く読めた。<BR>「貯蓄→投資」ではなく「投資→貯蓄」なのだという主張は大いに納得。経済現象・国家財政への見方が変わりました。素人とは思えない日本経済に対する鋭い洞察力。超一押し本です。
~著者はその際立った聡明さで関係者の間では知らぬ人のない存在である。<BR>その彼が全知全能を傾けて書き上げた本書が面白くないわけがない。<BR>本書の爽快さは、経済学という一見確立された学問領域も、素朴な疑問から出発して一歩一歩筋を追って考えて行くと意外にも錯覚に満ちあふれいることを解き明かした、その<理屈>の力にある。<BR>そして、その錯覚が今まさ~~に日本を底なしの国家破産に引きずり込もうとしていることが述べられるくだりでは身震いを覚えるともに、著者によって意外な、しかし筋の通った解決策が提示され、一種さわやかな感動を与えられる。<BR>権威によらず、自分の頭で徹底的に考え抜くことの価値をあらためて認識させられた書物であった。<BR>一部の説明が過度に単純化されていたり、制限付きで成り立~~っていたはずの<理屈>がいつの間にか普遍的なものとして扱われるなど、読んで行く途中で首を傾げることもあったが、何度も繰り返し頁を繰っているうちに、次第に本質が理解できるようになった。<BR>いい加減なところで妥協せず、自分が納得しながら読み進むなら、その思考プロセス自体がいつの間にか読者に考える力を与えてくれる、そんな不思議な本でもある。<BR>~~経済学者の側からの反論をぜひ聞きたい。~