下手な小説よりもはるかに面白いので、告発本としてではなく、単純に読み物としてもお薦めします。<BR>基本的には過去の話で証拠も無くなっていますから、ロッキードのようにこの本がきっかけとなって何らかの事件に発展するようなことは無いでしょう。また、建設業界の関係者やジャーナリストにしてみれば、今さらそれほど驚くような話ではないかもしれません。<P>とはいえ、普通の人にも分かる形であの世界の内幕を明かしたことは意味のあることだと思います。<BR>また、ここで取り上げられている談合というのは、そのほとんどが著者の関わった国鉄清算事業団の土地入札に絡むかなり特殊なタイプの事例であって、一般に談合事件として取り上げられるようなものを想像していると、イメージとは違うと感じるかもしれません。<BR>しかし、社会からの風当たりが強くなったのにともなって、建築業界においては旧来型の談合は難しくなっているので、その中でどのようにしてゼネコンが仕事を取ってくるのかという仕組みを明らかにしていると言う点において、非常に興味深いところです。
ゼネコン大手の大林組に関わる官民癒着と談合の歴史が書かれていました。著者はゼネコン業界の不正を少しでもなくすことを願って出版されたようです。<P> ただ、本の内容は癒着や談合のことも取り上げられてはいますが、大部分が著者の大林組での回想録のようになっており、大林組の歴代の重要人物の生い立ちや人間関係、人事異動のことがメインになっています。読者が知りたいのは癒着と談合の実態であって社内の人間関係には興味がありません。社内の内情が多く語られることにより、読者が知りたい不正の部分がぼやけています。<P> また、ここに取り上げられている不正は今更どうにもならない過去の実績で、これだけでは一般の読者は納得しません。読者が求めているのは記者が飛びついてきそうな生きている情報です。<P> しかし、出版物としてはこれが限界なのかもしれません。これ以上、介入することは人命に関わる可能性もあります。著者の命は大事です。そう考えれば、この本は貴重であるとも言えます。