殺人事件の謎と、盲目の女性の自立、そしてアキヒロとミチルの生活。<BR>これはミステリー？それともヒューマン？けれどロマンティック！<BR>解説を読んだときに「結末がありきたりになりそう」と思ったら大間違い！<BR>初めは冷たく哀しい未来のない２人の人生を切なく思いましたが<BR>最後は穏やかな気持ちになれました。<P>繊細な情景と感情の描写が素敵でした。<P>アキヒロもミチルも心がとても繊細で、その心理描写が本当に上手いと<BR>思います。<P>言葉のない、生活の中での、互いの思いやる気持ちが、<BR>優しく暖かく、時に切なく感じます。<BR>アキヒロ、ミチルの両者の視点で物語が構成されているため<BR>二人に感情移入がスルリとできて、アッという間に乙一ワールドに<BR>入り込んでしまいます。

そこに存在を認められては困る者と、そこに存在を認めたくない者が、声もなく心を通わせていく様が、違和感なく受け入れられるのは、やはり乙一の心理描写が巧いせいだと思います。<BR>やっぱり完全なミステリーとは言い難いですが、二人のラストには感動します。<BR>短編が大好きな自分ですが、一気に読んだ作品です。