この本のテーマは3つ。<BR>一つ目は、「20代前半で著者はどうのようにして数億の金を手に入れ、どれほど豪遊をしてきたか」。二つ目は、「一転、地にまみれて背負った一億五千万もの借金を、九年でどのように返済したか」。そして、三つ目は、「日本経済はこれからどうなるか」。<P>一つ目と二つ目は、掛け値なしに面白い!著者の仕事に対する熱意と根性には、自己を振り返り大いに反省させられます。<P>ただし三つ目については、主張は明確ですが、論拠が今一つ。「株式市場での九年間に及ぶ修羅場の経験」だけでは論拠としては弱い気がします。ゆえに☆4つとしました。
1990年4月、バブル崩壊で背負った高利の借金1億5千万円を「空白の10年間」できっちり返済したという体験談。ちょうどこの時期(のほぼ半分)を外資系証券会社で過ごした者として多少のノスタルジーを感じて手にとった。(当然といえば当然だが)まず、著者が売買する銘柄の株価の高さに頭がくらくらした。さらに、これと決めたら迷いなく行け行けドンドンで買い進める著者の投資スタンスにため息が出た。父上が永田町とパイプを持つ方だったなど、著者が置かれていた特殊な環境を割り引いてもこの快進撃はすごすぎる。もちろん日経ダウが下がったから上場銘柄が全部下がるというわけではないが、当時のように圧倒的にネガティブな環境下で砂の中から磨けば輝く玉だけを立て続けに探しだすのは至難の業である。その勝ち残り方たるや単なる相場戦記の比ではなく、「私は飛行機墜落事故からこうして生還しました」的体験記に近いと思った。(だから、普通の人は絶対真似しないでね。)<P>そんな著者が力説する日本の株式市場の近未来図にはかなりの説得力がある。勝負は4年、その間は急回復するが後は・・・というシナリオは私自身のタイムテーブルに似ていて、共感を持って読んだ。著者の経験ほどではないにしても、ごく普通の人たちが普通に組んだ住宅ローンのために修羅場を経験するという現象がすでに起きている。変動の激しい社会ではチャンスも大きければリスクも大きい。それをプラスにするかマイナスにするかはあなたの判断次第だ、と著者は読者に覚悟を求めている。どんな時にも最悪を想定して最善を尽くす、という心構えが必要とされる時代なのかもしれない。
株でバブルで大負け。多くの自殺者も出た。著者は当時は証券会社につとめていても、自分で取引をしている。ましてや仕手株筋からの情報も得られる。バブルで損をした多くの一般人はそのまま消えていった。それを特殊な立場の人間がよみがえった話をされても、一般の人には当てはまらない。金を取り返しただけでなく、人生の勉強もしたことはすばらしい。成長劇として読むとおもしろい。また今後の予測も十分な情報と直感で展開されている。株を信用取引ぐらいまでは行ったヒトは読んでおいて損はない。