「日本人と中国人」と言うタイトルから、日中関係がうまくいかなくなる日中双方の理由を指摘しているのかと思ったが、本書が問題にしているのは全て日本側のことである。日本人は自分達の中で勝手に作り上げた中国のイメージを真の中国と思い込んでしまうので、実際の中国とそのイメージとのずれに対し、ある時は土下座、ある時は排除するのである。それで、中国人=天孫民族論から中国人=犬猿論と、極端から極端に振れてしまうとのことである。そしてこれは、天皇やアメリカについても言える思考パターンである。<P>また、著者は本多勝一著『中国の旅』を黙示文学としているが、「日本人は好戦的な民族である」との対外的イメージは、日本軍が南京を攻撃したことによるものとしている。これは市民感情を条約に優先させてしまったためであるが、これも日本人が常々留意しなければならない点だろう。<P>本書は、日中国交回復ブームに沸く1972~1974年にかけて連載されたものをまとめたものであるが、そのブームも冷めた目で見つめている。そして、秀吉時代まで遡って、日本人がどのように中国をイメージしてきたかを分析し、日本人の思考・行動パターンを的確に指摘した優れた著作である。
今、理解していることでしか相手を見ようとしない我々、そしてその勝手な見方から外れると見事に何も無かったことにするか、ハラを立てるか。この幼さを見事なまでに教えてくれる。<BR>我々は、この無定見な日本人という存在を自覚しないことには、また来た道を繰り返してしまうのだろう、300年前も、そして、このままだと300年後も、また何度も何度も繰り返してしまうのだろう。<BR>こんな日本は、これからどうやって、アメリカ、中国と付き合ってゆくのだろうか。