岩波文庫本は読みましたが、渡部氏の指摘があってこの完訳本が出るまでは、こまかい事情は知りませんでした。岡田英弘さんの本でも指摘されていますが、「清」というのは女真族の部族長が、モンゴルなんかと手を組んで倒して出来た、一種の「同君連合」政体で、中国=明に対しては、清朝という名を立てた皇帝で君臨したが、モンゴルや東トルキスタンやチベットには、ハーンとして君臨統治した由。清は中国ではない。<BR>清朝を倒した中華民国と内戦で勝った中華人民共和国は、清朝の領土を継承したということなのですが、満州人にとっても、モンゴルはウィグル人やチベット人にとってはいい迷惑でした。それにしても、満州人たちよ、いま、どこで何をしているのか? 末裔たちは、言葉を失い、中国語を喋り、先祖の偉業ははるか彼方の記憶に残るだけ? <BR>誤訳云々は、瑣末なことです(もちろん、あまりに杜撰な意味不明な訳は御免ですが・・・。<BR>この本は、マルクス主義史観に歪められた戦後日本の歴史解釈を矯正する第一級の資料であることは間違いないと思います。<BR>東京裁判で証拠書類として取り上げられなかった云々も、今となっては仕方無いことですが(当時は、勝者による一方的な敗者=悪というリンチ裁判だった)、このような復刻版が出ること自体が、過去の歴史をより真実にちかい形で評価する機運を作ってくれることを望みます。<BR>中国や韓国の最近の「出鱈目な歴史歪曲」を見るにつけ、この翻訳は、時宜に叶ったものだと思います。
清朝末期から満州国成立までの溥儀の動向や歴史的背景を知る貴重な歴史資料だと思います。引退したはずの西太后がどうして光緒帝をあのように抑えることができたのか、清室優待条件がどのような経緯で成立したのか、辛亥革命後もどうして溥儀が帝号を保持できたのか、どうして革命後すぐに溥儀は満州へ戻らなかったのか、などなど、一般の歴史書には書かれていない事柄が、いろいろと書かれています。一度読んだだけでは、読み過ごしてしまいますが、じっくりと読み直してみると新しい発見がたくさんありました。<BR> イギリスの学者が書いたものだがら、訳文は論理的で当たり前。それにしては学者臭くなく、読みやすい日本文で、とても単純なミスが多々あるようには思えません。誤訳だとか、ミスだとか言って重箱の隅をつつくのは、木を見て森を見ず。岩波版の欠点を補ってなお余りある完訳版です。
誤訳が多いとか、原書を読んだほうが良いという意見も有りますが、一般の人々には、対処の仕様が無いのです。岩波のメディアとしての責務を捨てた<BR>「紫禁城の黄昏」より、資料、紀行記録としての価値はこちらの方が大変優れていますし、我々の知的好奇心の探究にも十分答えてくれ、皆さんの蔵書に加えうる、貴重な2冊に間違い無いと思います。<BR> ただ少し高価なのが残念!