両被告に死刑判決が出たのを機に、新聞記事を時系列に読む機会を得た。小倉少女監禁事件に端を発する報道は、構成に妙のある推理小説以上に不可解で吸引力があり、一気に最後まで読むとともに本著購入の強い動機となった。<BR>本著は作者の主張を声高に述べることは無くノンフィクションに徹しているが、新聞記事からでは想像で埋めることしか出来なかった動機であるとか極限の心理状態であるとか、それらをかなり補うことのできる情報がある。その結果、本著のある意味“主人公”である緒方被告を“被害者”という視点でしか見れなくなってしまった。新聞記事を追うだけではそんなことは決して思わなかったので、ニュートラルに事実を並べた本、とは言えないのかもしれない。<BR>しかし、現代日本でこんなWW2下の収容所生活を精神科医の目で描いたノンフィクション『夜と霧』ばりの極限の心理状態がたやすく出現し得るのだ、ということが恐ろしい。被害に遭った人が特殊だったのではなく、詐欺師である松永被告の、金という目的以外のものに対する冷酷非情さが特殊だったのであり、また、それさえもオレオレ詐欺やらリフォーム詐欺やら弱者から徹底的に金を搾り取る犯罪が多発する現代日本においては普遍的なものでありうるという事実に気付かされ、慄然とした。特に本著では言及してないが、事件の背景には日本特有の社会構造や詐欺の土壌があることも窺わせる。非常に考えさせられる本である。
この事件はカッコウのワイドショーネタであるにもかかわらず、あまり報道されてこなかった。この理不尽すぎる惨酷劇が、たぶんテレビのコード?を軽く超えてしまっていたからであろう。本書を読んで漸く事件の全貌は見えてきた。ただし不可解さは残る。というより依然として全く不可解なのだ。「事実」は分かったが「真実」はまだ見えてこない。佐木氏には、松永と緒方の人格、成育環境、家族、性癖などより詳しく調べ、より詳細なレポートを書いていただきたい。
恐い ホラーなんて目じゃない<BR>でも、頁をめくる手が止まらない<P>人間の本質とは?<BR>どうして征服と服従の関係が成立してしまうのでしょう?<BR>恐怖だけで人は支配されるのか?<BR>アウシュビッツとかも合わせて考えさせられてしまいます。