多種多様な経済環境と社会環境の中で、個人として組織の中でどのように成果を直接的に自分自身の成果へとつなげていけるかということが、端的・直接的に要点を確認できる。そして、組織の役割と個人の役割とが明確に理解でき、個が全を全が個をどう位置付けているのかということがよくわかる。いつも自分の行動に責任を持って行動し、成果につなげていきたい方にお勧め。ドラッカーは日本では軽視されがちであった、個の成果というものを組織を通していかに発揮し、そして個の重要性というものを、新しき価値観の到来という感覚で教え導いてくれる。
著者は「経営学の師の師」と呼ばれているようであるが、もっと広汎な人にも感銘深い、洞察と人間愛の人のように思う。<BR> 本書は、膨大な著作群のガイドブックを意図して編纂されたようだが、抜粋された思索はどれも珠玉のように輝いている。<P> たとえば、著者の父と、名声の絶頂期で最後の年のシュンペーターを訪ねたときの会話が印象的である。父は「ジョセフ、自分が何によって知られたいか、今でも考えることはあるかね」と聞いた。シュンペーターは答えた「その質問は今でも、私には大切だ。でも、むかしとは考えが変わった。今は一人でも多くの優秀な学生を一流の経済学者に育てた教師として知られたいと思っている」と。著者は「この会話を忘れることができない。本当に知られるに値することは〡人を素晴らしい人に変えることである」と結んでいる。<BR> 理工系の人にも読まれるべき人間学の書であると思う。<BR>
現代の社会において、単一の個人が大きな仕事を成し遂げる可能性はきわめて低い。たとえば、野球の満塁ホームランは走者が3人いて成り立つ。走者が一人もいないソロアーチは、状況によっては大きな仕事だろうが、走者がいた方がいいのは明白だ。<P>現代の社会において、それがひとつの法人というリアルの組織であり、契約や共同作業といったバーチャルな関係であり、仕事は組織の中でなされる。そして当書は、そのような組織人としての仕事のなし方を、我々に教えてくれる。<P>たとえば「勇気」。勇気とはいかにもわれわれの日常になじみの薄い言葉ではあるが、ビジネスの現場では、決断は勇気を必要とする。そしてドラッカーの慧眼は、「決断しないのも決断である」と説く。ここまで書かれると、「勇気」の必要性について納得してしますのは私だけではあるまい。<P>ドラッカーの本には明快さが満ちている。読後、明るい地平が見えるのは、私だけではないだろう。