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企業価値を創造する会計指標入門 ( 大津 広一 )

ROE、ROAといったよく耳にして、なおかつ定義自体はわかっているが、今ひとつ、企業の活動や戦略と、どのように結びついているのかわからない人に、会計指標を通じた企業の戦略の新しい視点をあたえてくれる本。<BR>たとえばROAは総資本回転率と売上高利益率の2軸に分解し、この空間にポジショニングされる各社の位置が戦略の違いを示しているなど、単なる数字に、企業の意思を反映させた意味を読み込む方法を学べる。<BR>それぞれの指標は、ケースを通じてより生きた説明がされているが、どの指標にどの企業をケースとするのかという観点でも、納得感が高い。たとえば武田薬品とROEなど、企業の重視している指標、その重視の度合いがほかの企業と比べて突出しているところを、上手に選んでいる。またそれぞれのケースは、その企業がおかれた外部環境と戦略について説明され、それとその指標の持つ意味の関連が記述されている。この分析は、一般的なアナリストのレポートよりも、企業のおかれた環境が構造的に記述され、とても参考になる。<BR>経営指標の会計的側面について詳しく書かれた書籍はあったが、このような視点で書かれた本は少なく、また論理の展開の仕方も秀逸で、著者の見識の高さ、論理的な姿勢をうかがわせる。<BR>各ケースで用いられている事実も、最新(2005年の会計数値まで)で、これだけの本を、この短い時間で書き上げたとしたら、本当にすごい著者の執筆能力である。<BR>参考文献、索引、用語集も巻末にあり、難しい会計用語があっても、理解できるように配慮されている。<BR>著者のほかの本もぜひ読んでみたい。

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