本書はすぐれた思考・作文の方法論を解説する以上の価値をもっている。それは「論理」に対する本書の意識にある。時として、論理は物事を述べる順序だと言われる。けれど、その本質はある人が物事をどこまで明晰に見つめ考えているかにある。論理はむしろ範囲なのだ。このことをはっきり意識している本書にとって、ピラミッド・プリンシパルなど場合に応じて捨て去ることは容易い。大切なのは、物事を考える方式や考えを述べる順番ではなく、自分自身がどれだけ徹底して物事を見つめるかにあるのだから。
いろいろな本が出ていて、そのうえいろいろな人がいろいろなことをいっているので 「もう どれがいいからわかんない。 ぜんぶかっちゃえ!」 などとおもっていませんか。<BR>上級者とおもっている人もこの本はあなどれませんし、「自分には難しい」とおもっている人もがんばってよみましょう。<P>トップコンサルティングファームでも「読め」といわれている本です。<BR>とにかくこの1冊で十分です。いろいろ手を出すのはやめましょう。
本書は考え「型」、書き「型」を教えてくれる本である。一般的に、或る「型」を受け入れることは、個々が我流で築き上げたオリジナリティを消し、ひとつの決められた形に矯正されていくイメージを受けがちである。しかし、「型」を持つことは、独創性の源泉となりうる。<P>型を学んだ上で、それを実行に移すこ時には、無意識で行っていたことを意識的に行わなければならなくなる。そこでは、個人の個性、独創性が嫌でも表れてしまう。つまり、「型」を持つことは、逆説的に、それぞれの独創性や個性を引き立てる結果につながるのである。<P>日本人は、小学校から習字や書き方の授業で字の「型」を繰り返し習練してきた。それにも関わらず、日本人の手書きの文字には、書いた人の個性が実に明瞭に表れてしまう。一方、アメリカ人の書く字は(私の知っている限りであるが、)概して似たり寄ったりである(その上、お世辞にも綺麗であるとは言い難い)。その原因は、アメリカでは日本ほどには書き方授業に力を入れていないところにあると思われる。<P>コンサルティングの付加価値は、説得力だけではなく独創性によっても決められる。マッキンゼー等のコンサルティング会社の独創性は、確固とした考え「型」、書き「型」を持ち、それを徹底的に教え込んできたところに一端があったのだと、妙に納得してこの本を読み終えた。