これは日本の80年代(崩壊前)の投資銀行の活動をオムニバス的につなげた<BR>もので、いってみれば金融版映画「甘い生活」である。ロンドンにいて、非常にユニークな背景才能を持つ黒木氏がわざわざ書くこともないと思うが(わざわざ書いたというよりは、これまでの執筆のための調査で鶏肋状態になっていた小ネタをここで使ったような感じがする)、網羅的であるし、あの流麗な筆致と観察眼、正確さ、構想力とに支えられ、よい読み物となっていることも間違いがない。金融界のビギナーが過去を要領よく知るには非常によい。2冊あるが、週末がんばれば読める。あと、巻末の参考文献表もありがたいものである(この世界の、いい文献が精選されている)。
1985年から90年までのバブル期に金融界で何か起きていたか桂木の目を通して語られていく。ホリエモンの株式取得を裏で支える外資の投資銀行はどんなことをやっているか? どうして、外資と邦銀では、こんなに力の差が歴然なのかという長らく私が抱えていた疑問にこの本が見事に応えてくれた。ちなみに、私は6章”異母兄弟”のモデルとなっている企業の元社員。創業者が世界のトップレベルのホテルを購入するにあって、当時社内では疑問視する声が圧倒的だった。やっぱり、全く戦略がないままに創業者はお買いになってしまったみたい。あ~あ。新聞などには決して書かれなかった裏話がちりばめられていて経済もドラマなんだな、と改めて感じた。