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| 日本海軍艦艇写真集・別巻 戦艦大和・武蔵
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呉市海事歴史科学館
戸高 一成
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国民には何も知らされぬまま竣工し、何も知らされぬまま海に消えていった巨艦。しかし戦後は一転、60年の時を経てもプラモデルの艦船では人気ナンバーワンを誇る大和と武蔵。だが、吉田満氏の『戦艦大和ノ最期』など一部の例外は別として、46センチ砲をはじめとする艦のスペックや海戦のことばかりが語られ、艦上で働き、戦った人々の具体的な輪郭像は明確に見えてこないものがほとんどだった。ところがこの本は(もちろん、細かなディテールの分かる艦内風景や図面など貴重な写真も多数掲載されているけれど)艦上で忙しく立ち働いている将兵の姿や、伊藤整一中将の温顔をはじめ幕僚、士官、予備学生、機銃員たちの顔を目にすることができる。最後まで見終えたとき、大和と武蔵が、人間の顔をもった船として初めて目の前に現れた気がした。
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