日本の神経心理学の第一人者による「わかる」の縦横無尽な分類。<BR>症状を分類し損傷部位に対応させる神経心理学の如く,「わかる」をとにかく分類し経験に対応させる。そしてやや唐突に「わかる」とは運動化できることだ,と宣言する。これはまさに,分類した症状をナントカ症候群と宣言する神経心理学のスタイル。<BR>患者に神経心理学的診断をつけられるようになっても,脳も症状も患者もさっぱり「わかる」ことが無いように,本書のスタイルでは決して「わかる」とは何かわかるまい。<BR>本書は,一級の神経心理学者だから書けた,神経心理学的理解の限界そのものなのかもしれない。
「わかること」を心像というキーワードで平易に解説した一冊。この本によれば、知覚は「よく磨かれた鏡」のように、事実を心に映り込ませるのではなく、発生した現象をいったん取り込み、知覚心像として再構築する。言語も音韻で構成された知覚心像の一つだが、自分の中の記憶現像と響き合わないと「意味」が生まれない。そして「わかる」とは、主に言語体験で自分も相手も同じ記憶心像を喚起することに他ならない。<BR>また、いろいろな「わかる」が存在すると指摘している。 全体像により「わかる」(専門用語で見当識と言うそうだ)、整理すると「わかる」、筋が通ると「わかる」、規則が通れば「わかる」など。<P>筆者ができるだけ平易に説明しようとしていることは認めるが、伝えるべきことの整理が少し足らないかも知れない。「規則が通ればわかる」と「ルールを発見すればわかる」などはダブっていると思う。<P>しかしながら「わかること」がわかってくる面白い一冊には間違いない。
ものごとに対して、なんとなくわかった気になっていても、心に違和感を覚えることがあると思います。そんな心のモヤモヤが多い方には、特にオススメします。<BR>「わかる」とは「感情」である。自分が創り出す心の中のイメージによる作用である。そんなことを基本に「わかる」ことについて書かれた、とても「わかりやすい」本です。<P>まず、「心象・言葉・記憶」などの「わかる」ことをわかるために必要な基本概念を解説しています。<BR>その上で、「わかる」ことを「全体像・整理・仕組み」などの観点で分類し、「わかる」という感情が生まれるメカニズムを例を挙げながら丁寧に紐解いていきます。<P>そして、真に「わかる」ための実践的なヒント、たとえば、内側から生まれる知的欲求、理解と行動の関係、琡?解の階層などについて、科学的知見とともに著者の思想をバランス良く記述しています。<P>総じて、現代の社会が必要としている、素晴らしい入門書だと感じました。しかし、著者の社会的メッセージがもっと強く表現されていてもよかったと思いました。加えて、入門書として成功しているのですから、参考図書を掲載することで、より深いレベルに進むことができるようにしていただきたかったです。このため、星をひとつ減らしました。