この本はただの「天文学」の本ではありません。「前提が一つ変わると結果が如何に変わるのか」を、物理学・化学・生物学と多岐に渡る科学の知識を総動員して、出来る限り定量的に推測しています。その結果が、あまりにも予想外なので、「理系の知的好奇心」が大いにくすぐられ、刺激になります。<P>つまり、思考回路(発想力/論理的推理力)を磨くのに良い本だと思いました。特に理系の方、「科学に裏打ちされた、非常識なモノ」を探索研究されておられる方が自らの発想力を磨くのに良い本だと思います。新しい発想を生むためには、前提条件を変えてみる(or 省いてみる)とどうなるかを考えてみる、という方法(※)があります。その場合、如何に論理的に定量的に結果を推測できるかが鍵になります。そんな場面で問われる思考力とは一体どんなモノでしょうか? その具体的な例がこの本(もしも月がなかったら)にあります。<P>この本のような、「理系の思考回路を磨く本」に興味を持たれる方は、次の本にも興味を持たれるかもしれません。ご参考までに列挙してみます:「数字オンチの諸君!」(ジョン・アレン・パウロス)、「アインシュタインの夢」(アラン・ライトマン)、「ゾウの時間 ネズミの時間―サイズの生物学」(本川 達雄)<P>(※)「頭脳(あたま)を鍛える練習帳―もっと“柔軟な頭”をつくる!」(ロジャー・V・イーク)の「『もしも~だったら』を考えよう」の章を参照にしました。この本もお薦めです。「頭にガツンと一撃」されますょ。(^-^)
ファンタジーな題名に反して、なかなか科学しています。<BR>理数みたいな話は苦手な人もこれは読みやすい内容かと。<BR>少々SFな感じもありますが、丁寧に解説してくれています。
基本的には地球科学、宇宙科学の本なのですが、本書の傑出しているところは単に地球と宇宙の仕組みを述べるのではなく、もし現在の状況と異なる世界だったらどうなるのか、という逆説的な発想で、科学法則と関連を語るところにあります。<BR>これは図らずもSF的アプローチと全く同じ。特にハードSFとされるジャンルそのものといってもいいでしょう。<P>唯一違うところは、SFには作者ならではのプラスαがありますが、本書ではそれがないことぐらいでしょう。ある一部分の要素を変えることで、我々の地球環境がどのように変化するのかを描いた本書は科学の本でもあり、シミュレーションでもあり、(上記と矛盾するようですが)SFですらあります。<P>あくまでも科学本なのですが、単調に地球の科学を書いていく本に比べて10倍面白く読めます。<BR>ここで設定されている10の状況も、そこらのSFよりもはるかに魅力的。科学書だから当たり前ですが、既知の科学・物理学しか用いていないので、説得力は十二分にあります。<P>また、SFのアイデア、教科書としても使えます。本書を読むと異世界SF/ファンタジーの世界設定で、月が二つあるとか、リングがあるとかいうのがいかにチャチなのものか知らされることでしょう。