予測不可能な潜在的可能性に、一流の研究者、学会著名人の著者らは目を向けさせてくれる。誰も想像だにしない人類滅亡のシナリオ、待機成分の変化による急激な窒息死、それが著者から提示されてはや12年がたつ。自分の生活を続けるために不利な情報に人間は耳を傾けないという心理学の定理があるが、そうした敬称が無視され続け、さらに悪いことに、批判されもしたのだろう。しかし多くの批判にもかかわらず、著者の理論は、様々な根拠に裏打ちされて実証的になってきており、客観化されて明示されたという。台風の巨大化、12年前には誰も信じなかったが、今日ではどうだろうか。その著者が、近い将来、取り返しのつかない破滅的危機が温暖化によってもたらされると科学的に指摘している。台風の巨大化など、その悪魔のシナリオの序曲にすぎなかった。個人的には、著者の言う肝心の「モラルの確立」、広い人類意識の道徳的再建(これは社会学と宗教学の課題だろうが)がなければ、こうした地球規模の問題の解決はありえないと考えているが、地球環境をコントロールできるほどの科学技術の更なる発達に期待する立場もあるのだろう。道徳の再建という課題達成には、様々な方法で道徳教育学者が取り組んでいるが、デュルケムという有名な社会学者が提案している集合的沸騰という方法があり、あるいはユングが用いた東洋的手法があり、私は、それなくしては人類の意識は根底からは変わらないと考えている。今こそ、文系と理系がここで融合し、一致協力して地球を救ってもらいたい。環境変化の急激さにかんがみると猶予はない。おそらく悠長に議論している暇もないだろう。
化石燃料の大量消費がもたらした大気中のCO2濃度の急上昇とそれによる地球温暖化は、テロリズムの比ではない。西澤・上野両博士は、最新の科学研究の成果から、人類に迫る真の危機、すなわち、映画『デイ・アフター・トゥモロー』で描かれたような突然の氷河期襲来か、人類を窒息死へ追い込む大気の変質が近未来に現実化すると警告している。特に、CO2濃度の上昇と温暖化は、それぞれが因となり果となって高進すること、そして何より重大なことは、この過程を「前倒し」に加速する仕組み、つまり温暖化によるメタンハイドレートの大崩壊で一挙にCO2濃度が高まる「悪魔のサイクル」の存在を示唆している。本書では、ノーCO2の人工生態系構築と環境創造哲学の確立による人間社会の方向転換についての論議と指針を提示している。