どっかの良家のお嬢さんが、良い大学でてNHK入って撮ったドキュメンタリーという感じ。子供のころから朝日新聞よんで、社会に対する意識が高くて、作文コンクールでいつも優秀賞もらってましたというような。<BR>短期ながらも自ら底辺層の生活にチャレンジしたのは認めるし、この本が面白いのもそこにつきる。しかしそれだけだ。各仕事を長くてもせいぜい1週間やる程度であれば、最初から自分が持っていた社会構造に対する先入観はブレークスルーできないだろう。始めから結論があり、その結論を強固にするためだけに、悲惨な底辺層をルポしただけのように思える。<BR>特に、自分に都合のいいように論理展開するために、矛盾した主張も平気でしていることが気になる。また経済学に対する知識は皆無なようだ。よくいえば著者の「ヒューマニズムあふれる体験記」。しかし実際に受ける印象は、せっかくの体験であるにもかかわらず薄っぺらである。
サッチャー政権下での経済政策の結果が貧富の差=二極化現象 への布石だったのか?英国のみならず、米国や日本は、現在、そうなりつつある。これをどう評価するかは非常に難しいが、一部の知識エリート層と、大多数の「とりあえず元気だけいい、日々の生活水準の満足することを強いられる層」とに身分格差が生じていくことは果たしてどうなのだろうか?現に、消費の面でも特定のセレブ層をターゲットとした商品、業態がある反面、激安低価格の商品・サービスを武器にする業態があり、今や「中流」をターゲットとしていてはビジネスは成り立たないといえる。
サッチャー政権による経済効率を優先した政策が英国において何をもたらしたのか、ルポライターとしてのフィールドワークの経験を動員し、実際の場面を綴ったもの一冊。理論やマクロでは割り切れない、現実の様が迫ってくる。<BR> 感じるのは、先進国における経済政策がその国に貧富の差を生じたとして、貧富の差の存在そのものを論拠として、政策の是非を論じることは極めて難しいものだということ。<BR> 即ち、フォークランド紛争当時のサッチャー政権は、失業率が10%を超えていた(単純比較では現在のわが国の2倍以上)。政権による公的セクター縮小等もあり、その後失業率は20%台近くまで上昇したが、他方、失業者の増加が新規創業をもたらし、2000年には5%を下回る水準にある。これら新規創業に支えられ、英国の中小企業セクターはひとつの成功モデルとされている。<BR> また、英国自体の経済力なくして、英国国民への経済福祉も成立しないし、加えて、世界的に見れば先進国であり富める国の一国民であることも疑いようがない。<BR> このように考えると、確かに貧富は事実としてあるのだが、問題はその問題自体をどのような枠組みのなかで捉えるのかということに収斂されるように思えてくる。古今東西すべての国民が豊かさを感じ得た国は存在せず、故に問題を一意にSpecificにし難い。「最大多数の最大幸福」を旨とする資本・自由主義経済の母胎たる英国の本書事象を通じて、単に経済・社会・政治の範囲に、探索すべき回答の在り処を留めるべきではないものと思われるのだ。<BR> 以前ベストセラーとなった「もしも世界が100人の村だったら」ではないが、比較対象をどの範囲で捉えるかによって問題の本質が変わる事象であると同時に、人間の認知が及ぶ範囲とはやはり近くの他人に留まり易いものだということなのだろう。