とても示唆に富んだ内容です。知識には言語化しやすい形式知と、そうでない暗黙知があり、欧米は個人主義に基づく形式知に、一方日本は集団主義に基づく暗黙知に強いが、良い企業であるためには、2つの知を組み合わせ、共同化・表出化・連結化・内面化の4つのプロセス(SECIモデル)を実践し、知識創造しなくてはいけないという内容です。<P>事例は日米の企業を中心に取り上げられていますが、どちらかというと日本企業が多く取り上げられ、また日本企業のほうが詳しく分析されています。知識経営・ナレッジマネジメントの分野に関心のある方は避けて通れない名著だと思います。<P>時間のない方は、この本の要約的内容である第8章だけでも読むとよいと思います。訳も秀逸です。
米国にはHBSを中心に多くの経営戦略に関する議論があります。それらの多くは極めて洗練されています。説得力があります。特にポーター先生の理論は複雑な経営雑務をモデル化して、切れ味鋭く料理しています。それらを理解することでかなりの部分において、日本企業がおかれた現状と課題を浮き彫りにすることができます。しかしながら、米国発経営理論では、なぜここまで日本企業、特に製造業が世界のキープレーキャーに成長したのか、課題はあるものの依然として世界ブランドとしていき続けているという事実に対して、説得力のある議論を提供はしておりません。(根本的には価値観の違いがあるので、当然といえば当然でしょうが。。)この本はそんなもやもやをすっきりさせてくれます。なんで日本企業はここまで大きく成長できたのか、そして本当の課題はなんなのかについて有意義な示唆を提供してくれると思います。”やっぱり日本の製造業は内部に競争力の原動力をもっているのだ。今までのやり方は基本的に間違ってはいないのだ。”ということに気づかせてくれます。考察も深いです。知識創造の過程を一般的なプロセスとしてとらえ、経営理論にまで発展させようという試みがなされています。(残念ながらモデル化のレベルでいえば、ポーターには遠く及んでいないと思いますが。。)いずれにせよ、読まないと損をします。読んで損せずにすんで良かったな。
なぜ日本企業が多くのイノベーション(知識創造)を成し<BR>欧米企業はできなかったかを哲学による歴史的文化背景を<BR>比較することによって、説明している凄い本である。<P>本書の初めの部分では、この哲学の概念を説明し、<BR>中間部分では、多くの日本企業の知識創造の過程を<BR>説明しながら方法論として体系化している。<P>そして後半部分では、その知識創造に相応しい組織論に<BR>至り、さらに結論として、グローバル企業の成功例などを挙げ<BR>日本式(暗黙知)だけでなく欧米式(形式知)とのコラボレーションがベストな知識創造の場であると解いている。<P>単なる経営書の範囲を超えて、哲学の歴史的流れが<BR>文化を通じて企業に影響を及ぼしイノベーションの<P>国際競争力に差が出たことを書いてある。