経営学なんて机上の空論でしかないと思っている日本人も多いのではなかろうか.あるいは"現場を知らないで何がわかる"と考えている人もいるであろう.本書は世の中に経営戦略の手法を10つのカテゴリーに分け,それぞれの特徴を概説し,経営とは何かを考察するなかで,このような疑問に答えてくれている.筆者は,世の中の主流となった,机上の分析に頼りすぎた経営戦略論の風潮を警告し,本来の経営戦略はもっともっと広くて,深いものであることに気づかせてくれる.それにしても,カナダ学者の分析には,目を見張るものがある.我々も,もっとこのようなクリティカルな見方を身に付けねばなるまい.
経営戦略論を体系的に俯瞰したすばらしい教科書です。「経営戦略とは何か?経営戦略はいかにある・するべきか?」という深い問いを中心に、10の学派について多面的にわかりやすく、課題を明らかにしながら論じています。<P>非常に学問的・教科書的ですが、実務につながります。その多面的な視点のいくつかは、目からうろこでしたし、もやもやしていたことをすっきりさせてくれます。経営戦略にかかわる自分の仕事の見方を変えることができるようになり、視野を広げて、一歩ひいて考えられるようになりました。<P>今の仕事をしている間は何回も熟読させていただきます。
経営戦略、マーケティング、マネジメント等に係る新しい知識は、いつも流行と共にあり、新しい理論が生まれては古い理論が忘却されていく。<BR> 本書は、生まれては消えるこれら多くの経営理論を体系的に整理し、学派に分類した書。戦略論の森に迷い込まないための、正に「ガイド」。<P> 本書を手元に置いてから5年を超える月日が経ったが、新しい戦略論や経営技術を学ぶ際には傍らに置いていた。新しい戦略論やマネジメントの本を、興味がてら移ろいに読んでいくと、いずれにも、長所・短所があるのは違いないにしても、どれがどれだか判らなくなるときもある。ポジショニング、リソース・ベースド・ビュー、組織学習などなど。<BR> 本書が傍らにあると、戦略論の系譜のなかに各理論をプロットすることができ、各理論に没頭するのではなく、相対化しながら読み解くことができる。そんな有り難い一冊だ。<BR> また、本書に埋め込まれた「囲み記事」は重要なヒントになることが多い。個人的には、本書132ページの「視点から捉える戦略的思考」は引用することが多い。「戦略的思考とは、上から、下から、後ろを、横を、前を、越して、全体を通して見ること」とある。全ての視点から見た理論などない。<P> ミンツバーグの著書らしく、フィロソフィカルな暗喩と分析的精緻さを持ちながらも、他の著作に比べれば難解ではない。<BR> 本書が出版されてから5年を振り返って、改めて良書だと思う。