「香港で投資をする」ことに関して、ここまで親切な本に出合えたことで、人生、大いに得しました。<BR>まさに、「得する生活」です。
本書は、香港のシティバンクとHSBCの口座の作り方、その活用方法などについて記述した本です。具体的な記述と、豊富な図入りの実例。これをそのままやれば、香港に口座を開いて、さぁ経済的自立の第一歩、と思う人も多いのかもしれません。日本という国境に縛られない自由人、なんて素敵な自画像。本書は、手取り足取りのマニュアルと、そのような自画像を売る、たいへんよくできた商品だと思います。<P>では、本書は誰の役に立つのでしょう。本書をマニュアルに、そのまま香港で手続きすれば、とりあえず口座は作れるでしょう。でも、じゃあそれをどう運用すればいいのか。そもそも香港という、航空券だけで何万円もするところに口座を作ってどういうメリットがあるのか。もし日本がダメになったときの保険というならば、たかが「小富豪」が「日本」という看板がなくなったときにやれるだけの金を持っているのか。さらに言えば、本書で書いている内容は、英語がちょっとまともに話せれば、口座を取りたい銀行員が懇切丁寧に話してくれる内容であるのに、わざわざ日本語で書かれたこんなマニュアル本に頼ってしまう人が、万が一銀行と折衝しなくてはいけないシーン~それはリスクのある投資をする人は多くの場合必ずめぐり合うシーンですね~において、きちんと銀行と渡り合えるのか。<P>そういう、現実的な自省とまっとうなリスク感覚については、本書は微妙にスキップして書いていると思います。本書だけを読んでいてなんとかなると思う人は、一度シティでもHSBCでも、香港の英語サイトを見て、ある程度でも対応できるかどうかよく検証することをお勧めします。そういう意味で、本書は極めてよくできたマニュアルですが、実用にはなりにくい本だと思います。英語はできないけど、どうしても海外金融機関に口座を作りたいのです、という人には、本書とあわせて、安間伸氏の著書を読むことをお勧めします。
口座開設に際する面談での質問事項の内容をもっと丁寧に記載してあれば、事前の準備もでき、よりスムーズな口座開設ができたと思います。私が本書片手に口座を開設した2004年12月13日現在、HSBCビル内部の間取りは本書に記載されているものとは異なっており、パワーバンテージ開設はLEVEL3で行われます(LEVEL5にあがったとたん、警備員が詰め寄ってきました)。また非常に重要な事ですが、口座開設時の必要書類として、本書ではパスポートの他には紹介状が挙げられていますが、11月15日から紹介状は必要なく、代わりに銀行の英文残高証明書が必要となっています(準備可能な方はバンクリファレンスでもよい)。残高証明書は現在あなたが持つ銀行口座のもので、正式なレターヘッドを使用した、口座の名義人(あなた)の住所が記入されていて(手書き不可)、発行銀行担当者の手書きサイン入りで、発行銀行の判が押されたものがベスト。残高も20万円前後あれば安心。ちなみに実際に上記の条件を満たすよう、依頼して作成してもらった日本の複数の銀行の証明をHSBC持って行ったところ、U○J銀行とソ○ー銀行は合格、み○ほ銀行と三○○友銀行は不可でした。最近のHSBCのルール改正によりこの辺りの重要情報が抜けていますが、これらの点を除けば、本書は現在も非常に役に立つと思います。