---趣旨---<BR>おれは戦争なんてもなぁ、でぇきれだぁ!でも戦車は大好きだぁ!<BR>という趣味のおもむくままに、描かれた落書き。でもちょっと面<BR>白い。<P>---本論---<BR>宮崎駿って、アニメでもそうなんですが、人が直に動かすタイプの<BR>戦車や車やらがモゴモゴ動くのが好き。それを直に叩きつけたのが<BR>この本です。<P>動くモノ、たとえそれが武器でも大好きで大好きで大好きなんだけ<BR>ど、それが傷付いたり痛んだりする戦争は大嫌い。そんな思いが横<BR>溢する作品。尋常ならざる描き込みと、蘊蓄と思い入れたっぷりに<BR>好き放題描いている。構成や粗筋なんか知ったことではない、まし<BR>てや盛り上がりなんというモノなんか知らんふりという明確な態度、<P>ある種の怪作といってよいと思う。それが表題作。<P>!続編にあたる「ハンスの帰還」はちょっと趣を異にして、疾走し<BR>機転を効かせて、コロコロと行く、ちょっと楽しく危険な戦車旅。<BR>ファンサービスかクラリスタイプ(キャラが少ない..)のキャラが<BR>出てくるけど、まぁ、それは付け足し。戦時下の女の子が機転と<P>柔軟性を示すという、女性上位という手法も使ってはいるけど、<BR>主役はやはり戦車。<P>この本、胸のすく様な戦争モノが大好きな人が読むと幻滅するか<BR>もしれない。<P>--付け足し--<BR>相変わらず定規なんかによる直線が嫌いというのが、面白い。<BR>枠線のごにょごにょ感が、味わい
この本に関して評価が分かれるのは、宮崎氏の作品の幅の広さから見れば致し方のないことかもしれません。購入は中身を見てからというのが一番でしょう。趣味に合えば大変楽しめますので、星は5つにしました。<P>「風の谷のナウシカ」を初めて読んだ時、宮崎氏の兵器や用兵の造詣の深さに驚かされました。そしてその辺が話に深みを加えているように感じました。この妄想ノートを読んでなるほどと感じた次第。芸が幅広く受け入れられたとしても、肥やしの部分の受けは限られるということでしょうか。これを味わえる境目は、ティーガーの正面に砲弾が当たってエンストする場面で、オオッと思えるかどうかなんてことかもしれません。何故エンジンが止まってしまうのか。そしてそれがいかに致命的な状況なのかわかります?まあ興味がないほうがふつうでしょう。<P>オットー・カリウス氏の「ティーガー戦車隊」の中で何故ナルヴァの部分を取り出したのか。雑談の部分を読んでも実は私にはあまりピンと来ませんでした。少なくとも宮崎氏が単に派手な戦い好きであれば、8両のティーガーを率いて、実質二両で大戦果を挙げたマリナーファの戦いを取り上げていたことでしょう。<P>1,350両ほどしか作られなかったティーガーは、いつでも一両で5から10両の敵戦車と対峙したと簡単に言われているようです。どの戦いをとっても想像を絶する世界であったことは間違いありません。何しろロシア軍だけでも大戦中に700万人は死んだことになっていますから。古戦場(!)のナルヴァを訪れたところの話は少々しみじみした気分になりました。<P>「ハンスの帰還」は肩の力が抜けているように見えつつ、これも趣味性の高い作品でしょう。これはモデルグラフィックスの掲載のための執筆という気分が出てるかのように思えます。
第二次世界大戦中、ティーガー戦車での活躍で名を馳せたオットー・カリウス。その彼本人が書いた「ティーガー戦車隊」という本に感銘を受けて宮崎さんが書いたのがこの漫画だ。カリウス氏に直接会い、その時々の戦車や兵員の位置を詳細に把握した上での著述であり、少しおどけた表現を織り交ぜながらも非常に現実感のある仕上がりになっている。また、後ろには当時の戦況やエストニアについての読み物と、もう一つの戦車もの漫画「ハンスの帰還」も付いているのでこの値段はそう高いとは云えないのではないだろうか。<P>どこまでも基本動作を怠らずひと時ひと時の積み重ねを欠かさない。そういう人が、どの分野であれ、いつも最終的に優れた結果を残す。このことが正に当てはまるのがカリウスだった。彼は自分の足で常に戦場の地面の状況を把握し、他の数々の基本事項にも決して手を抜かなかった。この、こつこつと撃破される可能性を下げ、敵への効果的な攻撃法を考える冷静さが彼を終戦まで生き残らせたに違いない。<P>宮崎さんは、この「泥まみれの虎」と「ハンスの帰還」を脱稿して彼の中の戦車シーズンは終わったと感じたそうだが、その理由は「戦場での延々と続く様々な行動(例えば排泄)の繰り返しを表現できるメディアはない」ということだった。これは、宮崎さんが強く『日常』を描きたいと願っていることの表れなのだろう。実際、彼の細やかな人間観察には瞠目すべきものがある。これだけ重装甲ででかい大砲を積んでるゾ、というのを見るとその兵器自体以上にそれを操る人間に興味が行くのが宮崎さんなのだ。